とりあえず工藤家の皆様が自分たちの部屋に荷物を置きに行ってる間に、スープやご飯を装っていると先ほどからご機嫌ナナメな工藤くんが一番乗りで下りて来た。
「スゲー…」
『そんなとこで突っ立ってないで座ったら?』
「お、おう」
自分の家なのに、どこか落ち着かない様子の工藤くんの元に、スープを置くと、あ、どうも。なんて他人行儀な反応が返ってきた。
どうやら文句も質問も全部どうでもよくなってしまったらしい。
うん、いいことだ。
「まぁっ!」
「これは豪華な夕食だ!」
先生たちも自分の席に着いたので、先生たちにもご飯とスープを持って行って、あたしも席についた。
本当は料理だけ作って帰るつもりだったんだけど、先手を打たれて、先生に一緒に食べていくことを勧められたんだから仕方ない。
『お口に合うか分かりませんが、どうぞ』
それまで食べようとしなかった工藤家のメンバーが、あたしの一言でいただきますと食べ出してくれたところを見ると、どうやらあたしからの言葉を待っていてくれたらしい。
こんな風に他所様の家でご飯を作ることなんてなかったので、こういうのが当たり前なのかな?と思いつつ、あたしも料理をいただくことにした。
「んーっ!美味しいっ!なまえちゃん、この料理の作り方教えてくれる?」
『いいですよ?簡単なので、実はすぐ作れたりしますけど』
「なまえ君がこんなに豪勢な食事を準備してくれていたとは。急いで帰って来た甲斐があったな」
『そんな。いつもの有希子さんのお料理だって美味しいじゃないですか』
先生も有希子さんも気さくに話しかけてくれるのに、工藤くんだけは黙ったままだ。
やっぱりあたしが一緒にいない方が良かったんじゃないかと不安になる。
『工藤くん、どうかな?』
「ん?」
『さっきから黙ったままだから、美味しくなかったのかなぁーって』
「えっ?いや、そうじゃなくて」
『やっぱりあたしがいるから?帰った方が良かった、かな?』
「そんなんじゃねぇって!ただ、みょうじって菓子だけじゃなくて、料理も上手ぇんだなぁって思ってただけだからよ」
どこか照れくさそうに話す工藤くんが可愛くて、あたしもやっと笑顔になれた。
その後は工藤くんが先生たちにいじられながらの楽しい食卓になった。
あたしも便乗させてもらいたかったけど、また盛大に拗ねられたら大変なので、今回は工藤くんのフォロー役に回ってたり。
大勢で食べるご飯ってやっぱり楽しいな。
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