22.お出迎え


料理を作り終わってダイニングテーブルに並べ終えると、あたしの部屋(と言ってもいいのかは今でも悩むけど)で、ナチュラルメイクをして先生たちの帰りを待っていた。

先生から、空港に着いたよというメールを貰うとすぐに返信をして、スープを温め直す為にキッチンへと向かった。

そのままキッチンにいたんだけど、外からとんでもないブレーキ音が轟いて、もしかして事故でも起こったのかと思わず外に飛び出した。


「ったく、母さんの運転はいつも乱暴過ぎんだよっ!」

「あら、ちゃんと無事に帰れたんだからいいじゃない。それに早く帰りたい理由があったのよ。ね、優作?」

「まぁ、そういう訳だ。待たせてしまったかな?」

『……』


にこやかに笑顔を湛えている先生と有希子さんに言葉が全部引っ込んだ。
えっと、一番におかえりなさいを言うつもりでいたんですけど、この現状は何ですか?


「みょうじ!?何でオメーが家にいんだよ!?」

『えっと…先生に頼まれてお夕飯を作りに来たから?』

「は?」

「なまえちゃんのお料理が楽しみでちょっと飛ばして帰って来ちゃった!」

『有希子さん…あたし事故でも起こったんじゃないかと思って飛び出して来たんですけど?』

「あら、そうなの?騒がせちゃってごめんなさいね?」


というか、一体どんな運転をしたらあんな音が出るんですか。
現状を見る限り工藤邸内に普通に車が止まってるだけなので、余計に謎なんですけど。


「なまえ君、ただいま」


車を見ながら呆けていたあたしの思考がその一言で正常に戻った。
満面の笑みで先生に伝えたかった言葉を述べる。


『先生、おかえりなさい!』

「食事の準備が出来ていると有希子に伝えたら、とても喜んでね」

『先生たちのお口に合うか分からないので、ちょっと不安なんですが…』

「絶対美味しいに決まってるわよっ!それにデザートまで作ってくれたんですって?もうあたし楽しみで楽しみで」

「おい、みんな揃って俺の存在無視してんじゃねぇよっ!」

『工藤くんもおかえりなさい』

「あ、ただいま。じゃなくてだなっ!」

「さぁ、新一。早く中に入ってご飯にしようか。なまえ君、お願い出来るかい?」

『はいっ!もういつでもOKです!』

「なまえちゃんの手料理、ホントに楽しみだわ!」

「だからっ!誰か俺の話も聞けって!」

「新ちゃんの話は中でゆーっくり聞いてあげるから大丈夫よ。ささ、入りましょう」


どこか納得していない、というかとても不服そうな顔をした工藤くんを、有希子さんが有無を言わさず中に押し上げてしまったので、あたしも一緒に中に入ることにした。



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