結局昨日は誰かに会う気分になれなくて、夜になってから自分の家に帰ってきた。

気分転換にお菓子でも作るかと、準備していたら携帯が鳴った。
こんな朝早くから誰だろう?


『もしもし?』

「あぁ、なまえ君。朝早くにすまないね。今日そっちに戻るから約束していた夕飯をお願い出来るかな?」

『えっ!?先生、もう少しゆっくりされるんじゃ、なかった、でしたっけ…?』

「仕事が立て込んでいるからね。なまえ君とのデートの為にも早く帰ることにしたんだよ」


嘘だ。
それくらいはあたしにも分かる。
あたしが昨日あんなこと言ったから、予定を早めてくれたんだ……。

せっかくの家族旅行だったのに、あたしはなんて迷惑な子なんだろう。


『先生、』

「おっと。その先は言わなくていいよ」

『でも…』

「私はなまえ君の手料理を楽しみにしているんだが、大丈夫かな?」

『はいっ!デザートを含めて張り切って作ります!』


先生がごめんなさいを言わせてくれなかったから、せめて豪華に夕飯を作って先生たちをもてなそう。

ごめんなさい、の代わりにお帰りなさいを言おうと、何を作るか一生懸命考え出した。


昨日はあんなに落ち込んでいたのに、ホントにゲンキンだと思う。


先生たちを振り回してしまった罪悪感はあるけれど、それ以上に先生が帰ってくるんだと思うとどうしようもなく嬉しかった。

先生、お留守番も出来ないようなダメな娘でごめんなさい。
でも、その分、今日のご飯張り切りますから!


さっき作ろうとしてた簡単なお菓子を辞めて、改めて作るお菓子を考えながら、材料が足りないなとスーパーに出掛けることにした。


午前中の時間を全て使ってケーキを作ると、それを持って先生の家に行く為に、いつもよりほんの少しオシャレをしてみた。
化粧はご飯を作ってから先生の家ですればいいかと、早速先生の家へと向かった。

昨日は重かった足取りも今日はこの暑い昼間に出掛けてるというのに、とても軽い。



先生たちがビックリするくらいなお夕飯を準備しなくっちゃっ!



- 160/327 -
prev next

戻る
[ +Bookmark ]