あれから、のんびり本を読んだりして気ままに暮らしていたんだけど、4日が過ぎるより先にこの広いお屋敷に一人でいるのが切なくなってきた。
前にお泊まりした時は、本を読んでいても時々先生が顔を出してくれていたし、ご飯の時には有希子さんとお喋りしながら作っていたし。
自分の家に居る時は、余り気にならない“一人”というのが、この広い家の中ではどうしようもなく哀しくなってくる。
今日は下から本を持って来て、部屋から出ずに籠っていた。
まだ先のこととはいえ、工藤くんはよくこんな広い家で一人暮らしが出来たもんだとつくづく感心する。
『もしもし』
「なまえ君?どうかしたのかい?」
『いえ、何かあったとかじゃなくて…この広いお屋敷に一人でいるのが寂しくなっちゃって』
突然鳴った電話に相手も確認せずに出たら、先生からだった。
どうしてこうも毎回、先生は誰かの声が聞きたい時に連絡をして来てくれるんだろう。
「大丈夫かい?」
『大丈夫です。先生が帰って来る日にまたお料理作りに来るので、ちょっと自分の家に帰っちゃうかもしれませんが…』
「そんなことは気にしなくていいよ。気分転換にマスターの所にでも顔を出すといい。マスターも喜ぶだろうしね」
『はい、そうします』
普段一人で暮らしてるくせにたった1週間の留守番さえ出来ないなんて情けない。
そう思うと涙が溢れてきそうだったけど、先生の優しい手がないんだと思うと上手く泣くことすら出来なかった。
あたしはいつからこんなに弱くなったんだろう。
ずっと一人で暮らしてきて平気だったはずなのに、今は一人でいるのが寂しいなんて。
場所がこの広いお家になった途端に先生と有希子さんがいないのが耐えられないなんて。
読んでいた本を閉じて、自分の膝を抱き寄せて暫くそのままの姿勢でいた。
何だか本当に一人ぼっちになってしまった気分だ。
先生たちは家族旅行に行っただけで、いなくなってしまった訳ではないのに。
後数日で帰ってくるのに、どうしてこうも不安なんだろう。
また置いていかれるんじゃないか。
それしか考えられなくなってしまった。
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