あたしの必死の説得が効いたのか(いや、たぶん聞き流してたんだろうけど)とりあえずプリクラの話題はそれで終了になった。
服部君、やっぱり他人から見たらただのバカップルにしか見えないみたいだよ?
と、こっそり口に出さずに文句を言ってみた。
帰ったら、またメールでも入れて文句を言おうと心の中で誓っていると、先生から話題の差し戻しが入った。
「それで、今度の旅行なんだが、なまえ君も一緒に来ないかい?」
『先生…流石にあたしでも家族旅行を邪魔する勇気はありませんよ?』
「有希子ならなまえ君が来てくれた方が喜ぶと思うんだが…」
『有希子さんはそうかもしれませんけど、工藤くんに悪いです』
「やっぱり新一か」
『あ、いや、工藤くんが悪いわけじゃなくて!常識で考えても家族旅行に他人のあたしが混ざるわけにはいかないって話をしてるんです!』
まぁ、先生にも有希子さんにも常識が通じるかと言われると悩まざるを得ないんだけど。
「それなら、せめてこれを渡しておこう」
『え?何ですか、これ?』
先生に渡されたのは鍵だけど…え?これどこの鍵?
「私の家の鍵だよ。私たちが旅行に行ってる間、好きに使うといい」
『えっ!?いや、そういう訳には』
「なまえ君は読書が好きだろう?もう宿題も終わらせて暇だと言っていたし、一々我が家から本を持ち帰らなくても家で読んでしまったらいいさ」
『でも、家主がいないのに、勝手にお邪魔するなんて出来ないですよ』
「なまえ君の家でもあると、前にも言ったと思うんだが…」
『え?あれ、本気だったんですか?』
「当たり前じゃないか。なまえ君の部屋もあるんだから堂々と家に入って来て構わないんだよ?」
『……』
「それに正直な所、あれからなまえ君が家に全く遊びに来ないから、有希子が痺れを切らし始めてね」
『えっ!?』
「それに私との約束を覚えているかい?」
『一緒にお出かけするって言うアレですか?』
「そう。それもまだだし、丁度いいじゃないか」
『先生、お仕事終わったんですか?』
「うっ…」
『先生が締め切り前の原稿を終わらせてからって約束ですよね?』
「夏休み中には何が何でも終わらせるよ。どうせならなまえ君と一日楽しみたいからね」
そんなことをさらりと言う先生。
嬉しいですけど、そんなに時間取れるんですか?
と心の中で抗議してみる。
だって、楽しそうな先生に直接抗議するなんてスキルはあたしにはないんだもん。
やっぱり先生といる時間好きだなぁ。
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