しばらくそうやって工藤くん越しの水面を眺めていたんだけど、息が続かなくなったのか、工藤くんが上がってしまったので、あたしも次いで海面へと上がった。
『どう?キレイだったでしょ?』
「はぁ…はぁ…」
『工藤くん?』
「ってか、なんでオメーは息が切れてねーんだよ!」
なんて、どこか悔しそうに睨まれたけど、そんな理不尽なことで怒られても困る。
『だって平気だもの』
「にゃろう…」
なんか工藤くんに敵対心持たれた気がするんだけど…何でだ?
『それで?海を中から見上げてみた感想はどうだった?』
「あぁ、確かにキレーだったぜ?ただ…」
『ただ?』
「なぁんにも聞こえねーから、少し寂しい感じがしたな」
『……』
「一人だったらな」
『え?』
「みょうじが一緒だっただろ?」
なんて、眩しい笑顔で言われても困る。
あたしにどう対処しろってのよ…。
マニュアルがあるなら、今こそ見せて欲しい時だと切に思ったけど、そんな手助けがあるわけがないから、あたしはこの場から逃げることにした。
『あたし泳いで来るけど工藤くんはどうする?』
「泳ぐって…オメー、こっから砂浜までだって結構距離あんだぜ?」
『うん。あたしあのブイまで泳いでから帰るつもりだから』
と砂浜を指す工藤くんとは反対に沖にあるブイへと指を向けた。
「は!?」
『あたし、海に来るとあそこまで泳ぎたくなるのよね』
「いやいやいや!まだかなり距離あるぜ!?浮き輪もなしで大丈夫かよ?!」
『あたし、工藤くんより体力あるから平気よ』
「にゃろぅ…」
『水の中では、ね』
また唸り出した工藤くんにオマケみたいに言葉を足した。
『じゃあ、あたし泳いで来るから明日香たちには心配しないでって言っておいて』
「あっ、オイ!待てって!!」
工藤くんの言葉を後ろに聞きながら、あたしはまた潜って沖へと泳ぎ出した。
ブイまで行きたいって言うのはただの口実だったけど、せっかくこの広い海に来てるのに、ずっと誰かと一緒だと疲れちゃうもの。
ごめんね、と心の中で呟いて水を切りながら一人で沖へと進んでいった。
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