ただいまー、と工藤家の玄関を開けると、先生と工藤くんがお腹空いたと訴えてきた。
いや、確かにもう13時過ぎてるけど、適当に作って食べててくれても良かったんじゃ…と考えて、この二人が料理を作ってる所が全く想像出来ないことに気が付いた。
部屋に荷物だけ置きに行って、有希子さんと二人で急いでお昼を作っていると、その間、男性陣はダイニングのテーブルで大人しく待っていた。
いや、料理を手伝えとは言わないから、早く食べたいならご飯や飲み物を運ぶのを手伝ってくれても良くないか?
「「いただきます」」
「はい、どうぞ」
『いただきまーす』
内心文句を言いつつも、あたしと有希子さんが席に着くまで律義に待っていてくれた先生と工藤くんが可愛かったから許しちゃってる自分がいたりする。
「有希子の料理も美味しいが、なまえ君が作ってくれるといつもより美味しく感じるよ」
『ありがとうございます』
リップサービスだと分かっていても、先生からのこういう言葉は嬉しいもので自然と笑顔になってしまう。
「俺が合宿行ってる間、父さんも母さんもずっとみょうじの料理食ってたんだよな?なんかそれってズルくねーか?」
『どこが?』
「どこがって…」
また変なとこを気にし出したな。この子は。
「そういうことだ。細かいことは気にするな、新一」
「どこが細けぇんだよ!?」
何故だか工藤くんが熱くなってたけど、先生にあっさり交わされてしまって、ちょっとご立腹らしい。
もう工藤くんって、ホントにこういう反応とかが一々可愛くて仕方ない。
『はい、食後のデザート』
「え?」
『これで機嫌直してね?今まではデザートまでは作らなかったんだから』
これは本当だ。
だって毎回デザート作るとか大変だし。
家なら材料も機材も揃ってるけど、何もないここでは作れるモノが限られてくるから、最終日に作ることにしてたんだもん。
チラッと工藤くんの方を見たら、どうやら少しは機嫌が直ったみたいなので、あたしも安心して食後の珈琲を口に含んだ。
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