「あら。新ちゃん、お帰りなさい」
「お帰りなさい、じゃねーよ。ちゃんと俺に分かるように説明しやがれ!」
『有希子さん、あたしも聞きたいんですけど、故意に間違った日程を教えた理由って何なんですか?』
工藤くんは有希子さんに負けないように勢いに任せて、あたしは落ち着き払ってにこにこしながら“さぁ、分かるように説明してもらいましょうか?”と言外に伝える黒いオーラを纏って、二人で有希子さん責めを始めた。
「し、新ちゃん、落ち着いて!なまえちゃんも!ね?」
「それは母さんの」
『返答次第ですね』
「おやおや。賑やかになったと思って来てみれば、新一が帰ってたのか。お帰り、新一」
「あぁ、ただいま。で、母さん、俺たちまだ返事聞いてねぇんだけど?」
「優作、助けて!新ちゃんがいぢめるの!」
「苛めてなんかねぇだろ!何でみょうじが此処に居んのかって聞いただけで」
「あぁ、なまえ君なら、お前が合宿に行ってる間うちに泊まりに来ていたんだよ」
「はぁ?」
『試験終わった日に玄関で会ったでしょう?あの日に約束したのよ。有希子さんの提案でいつの間にか決まってたって感じだったんだけど』
「だから、何でオメーはそういうことを俺に言わねぇんだよ!?」
『だって聞かれなかったし?』
「知らねぇのに聞けるわけがねーだろうが!!」
危ない危ない。
こっちに矛先が回って来た。
此処は本題に戻って、工藤くんには忘れてもらおう。
『それより、有希子さん。どうしてわざわざ間違った合宿の日程をあたしに教えたんですか?』
「なまえ君、それはだね」
『先生が共犯なのは分かってるんで、先生の言い分は後で聞きます』
先生の言葉を遮って、また有希子さんと向き合った。
「…なまえちゃん、怒ってる?」
『間違った日程を教えられていたって事実に関しては少しだけ怒ってます』
「…ごめんなさい」
いつもパワフル全開な有希子さんがしゅんって小さくなった。
可っ愛いー!
じゃなくって!!
『それより、どうしてこんなことをしたのか、理由を聞かせていただけますか?』
「あのね、怒らないで聞いてね?」
『内容によりますが、黙っていられるよりは怒りボルテージはマシだと思います。このまま話す気がないなら、あたし今すぐ帰りますから』
「!?」
泣きそうになった有希子さんにちょっと良心が痛みつつも、とりあえず話を聞いてみることにした。
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