『ん…』
カーテンから漏れる夏の強い日差しに意識が覚醒される。
確か、あたし昨日またあの夢を見て、そしたら先生が助けてくれて…
「おはよう、なまえ君」
『おはようございます…って、先生!?』
手に温もりがあると思って隣を見れば、先生がしっかりとあたしの手を繋いでいてくれていた…って何で!?
『え?あれ?あたし…』
「昨日のこと、覚えていないのかい?」
『えっと…またいつもの怖い夢を見て、そしたら今回はその後に先生が助けてくれ…って、あれ夢じゃないんですか!?』
「なまえ君が私の服を掴んだまま眠ってしまってね。気持ち良さそうに眠ってるのに起こすのも忍びないと思ってそのままにしていたんだよ」
おいおい…
何やってんだあたし?!
寧ろあたしのことなんかポイ捨て放置で結構だったんですが?!
「少しは眠れたかい?」
『あ…はい。お陰様で…』
先生に迷惑をかけたという羞恥があたしの顔に熱を点らせてますが!!
寝惚けてたとはいえ、何やってんだ!
あたしのバカヤロー!!
「昨日みたいなことは、よくあるのかい?」
『え?』
「昨日みたいに魘されることは、よくあるのかい?」
一人脳内でパニクっていたら、いつになく真剣な表情をした先生と視線が絡んで、思わず息を飲み込んだ。
これは、はぐらかしてはいけない。
そう本能が告げている。
迷惑かけた云々じゃなくて、きちんと話さないと…
『いつもって訳じゃ、ないんです。ただ、楽しい日が続いたりすると、夢を見て…。あたしが手を伸ばそうとするとみんな消えちゃうんです。あたしの居場所なんて何処にもないんだっていうみたいに…』
ちょっと自嘲的な笑みになってしまったのは仕方がない。
だって、本当にあたしには居場所なんてないんだから。
「そうか。なら、これからは私を居場所にするといい」
『え?』
「傍に居た人が居なくなるのが怖いんだろう?私はいつでも君の味方だ。だから、何かあったら私を頼ってくるといい」
『で、でも…』
「迷惑だなんて思ってるわけないじゃないか。なぁ、有希子?」
『え?』
先生の視線につられて、視線を部屋の入り口へと移せば、そこには有希子さんがにっこりと優しい笑みを浮かべて立っていた。
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