しばらく園子と言い争いをして、電話を切ってからも園子が言いかけたことが気になってたんだけど、サッカー部の練習が始まったので視線を窓の外へと向けた。
『工藤くんが何だってのよ』
今日の工藤くんは何処か強引で、いつもと同じとは言えなかったけど、無邪気にボールを追いかけてる姿は普段と変わらなくて思わず笑みが浮かぶ。
『やっぱ考え過ぎ、かな?』
思春期の男の子だもん。
きっとたまには普段と違うことがしたくなるんだよ。
なんてよく分からない理屈であたしは自己完結をした。
あれ?
でもあたしと一緒に帰るって、蘭はどうするんだろう?
あの二人っていつも一緒に帰ってるんじゃないの?
ってか待って!
二人きりで帰るとか蘭に勘違いされないか!?
確かに工藤くんのことは嫌いじゃないけど、それは恋愛的なloveじゃない!はず。
確かにさ、こっちに来るまでは工藤くん大好きだったけど。
ここで見た実際の工藤くんはまだアニメより幼くて、あの強い眼差しもなくて、変わりにまっすぐなどこまでも純粋な瞳をしていた。
からかうと一々反応してくれて可愛いし…
けど。
あたしはこっちの世界の住民じゃないし、年の差だってある。
今まで年上の人しか好きにならなかったのは、同年代以下の男の子が弟みたいにしか見えなかったからだ。
けど、工藤くんはどうだろう?
自分をしっかり持ってるし、今の段階でもファンが出来るくらいカッコイイ。
つまりは今まで近くに居なかったタイプなのだ。
だから、正直分からない。
『なんて、気にしてても仕方ないよね』
工藤くんと蘭がお互いを気にし始めたのはきっともっと幼い頃で、二人は両想いなはずなんだ。
あたしが気にするようなことじゃない。
これ以上余計なことを考えないようにと、鞄の中から本を出して、小説の世界に逃げ込むことにした。
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