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お泊まりの話はとりあえず決定事項らしいけど、考えないように頭の隅っこに追いやって、それからしばらくお喋りを楽しんだ。


うん。やっぱり普通に話してる分には先生と有希子さんとお話してるのは楽しい。

工藤くんがいない間にこっそりお泊まりとかちょっと(っていうか、かなり)気が引けるけど…せっかくだし、いいかな?


「おや、もうこんな時間か。なまえ君送っていくよ」

『いえ、まだ明るいですし、大丈夫ですよ』

「えーなまえちゃん帰っちゃうの?晩御飯一緒に食べて行きましょうよ!」

『いえ、工藤くんもそろそろ帰ってくるでしょうし、今日は帰ります』

「むぅ…新ちゃんのバカ!」


いや、有希子さん。工藤くん何にも悪くないですから。

ご機嫌斜めになってしまった有希子さんを先生と二人で宥めて、やっと工藤邸を後にする頃にはもう日が暮れそうになっていた。

と言うわけで、申し訳ないけど先生に家まで送ってもらうことにして、さぁ帰ろうと玄関で靴を履いていた時だった。


「ただいまー…って、みょうじ?!」

『!?』


なんと間の悪いことに工藤くんが帰って来てしまったのだ。


「おかえり、新一。父さんはこれからなまえ君を送って行くから」


どうしようとアワアワしていたら、それじゃあ行こうかと先生がそれはそれは何事もなかったかのようにスムーズにエスコートしてくれ、工藤家の扉は閉められた。

うん。工藤くん、ごめんね。

きっと何であたしがいるのかとか色々分からないままであろう工藤くんに心の中でそっと手を合わせて謝った。


「それにしてもさっきの新一の顔は面白かったな」

『そりゃあ、訳も分からず家を追い出されたかと思えば、あたしが家に居るんですから工藤くんも驚くでしょう』


ってか、下手したら工藤くん、あたしが家から追い出したと勘違いしてますよ。


「そんな心配しなくても、今頃、有希子が上手いこと誤魔化してるさ」


なんて、あたしの心を読んだみたいに言って先生は楽しそうに笑っていた。

うん、きっとあたしは先生には隠し事が出来ないんだろうなとつくづく感じながら、沈みゆく夕日を眺めていた。




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