マスターにもマドレーヌを包んだ袋を渡して、また遊びに来ますと挨拶をしていた頃、また先生の携帯電話が鳴った。
…もしかして、先生仕事サボって来たんじゃないだろうな。
「なまえ君、新一が出掛けたらしいからこれから私の家に来ないかい?」
『え?さっきの電話ってそのことだったんですか?』
なんつー下らないことで電話をしてるんですか、有希子さん…
「今日も私ばかりズルいと言われていたんだが、新一を追っ払ったからなまえ君にどうしても会いたいそうだよ」
『はい。それならお邪魔しますけど…』
追っ払ったって出掛けたって言うのか?
あたしよりヒドイと思いますよ。有希子さん…
「有希子、帰ったよ」
『おじゃ「なまえちゃーーーん!!」むぐわぁ』
工藤邸に入るなり、有希子さんに抱きつかれて玄関扉に思いきり体をぶつけてしまった。
これ、結構痛いんですよ。
「新ちゃんったらズルいのよ!?あたしもなまえちゃんのお菓子食べたかったのに、これは俺が貰ったんだって分けてくれないの〜」
『ゆ、有希子さん。とりあえず離していただけないと、あたし苦し…』
ぎゅうぎゅうに体を締め付けられて呼吸もままならないまま、とりあえず瞳いっぱいに涙を溜めた有希子さんに訴えてみる。
それについてはもう先生に渡してありますから!
頼むからあたしを解放して下さい!!
「ぐすん…なまえちゃんあたしにもお菓子作ってくれる?」
「有希子、私も新一ばかりズルいと訴えてなまえ君から私たちの分のお菓子をいただいたから、そろそろなまえ君を離してあげなさ」
「ありがとう!なまえちゃん!!」
『ぐはぁっ…い、息が』
解放されるどころか感極まった有希子さんに、余計に強く抱き締められた!
ヤバい。あたし死ぬかもしれない!
いや、冗談じゃなくて!!
「じゃあ、なまえちゃんゆっくりして行ってね?新一には当分帰ってくるなって言っておいたから♪」
『ぜぇはぁ…はぁ…お、お邪魔します』
ルンルン気分な有希子さんが離れたと同時に酸欠だったあたしは壁に手をついて酸素を目一杯求めるべく思いきり深呼吸をした。
だから有希子さん手加減して下さいってば!
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