「それでな、その時ホームズがこう語るんだ」
『見えなかったんじゃなくて、気づかなかったんだよ。どこを見るべきかを知らないから、大事なところをみんな見落としてしまうんだ。でしょ?』
「これも知ってんのかよ。お前本当にホームズ好きなんだな!」
『それは工藤くんでしょ?まるで本丸暗記してるんじゃないの?ってくらい次から次にホームズの話していくんだもの』
クスクスと楽しそうに笑うみょうじの笑い声が、なんだか心地良かった。
蘭にホームズの話をしても、またホームズの話?!って怒られんのに、ずっとホームズの話をしていてもみょうじは楽しそうにちゃんと聞いてくれる。
こういうヤツが今まで周りに居なかったからなんだか新鮮だ。
キーンコーン、カーンコーン
『あ、お昼休み終わっちゃったね。教室帰ろうか?』
「おう…」
何か物足りない。
みょうじと話してんのが楽しくて、昼休みはあっという間に終わっちまった。
自分の席について河野と話してるみょうじを眺めながら、本当にみょうじは聞き上手だよなぁ、と考えていたら思考が止まった。
…聞き上手?
俺、ずっとホームズの話ばっかしてて結局みょうじのこと何も聞けてねぇじゃねーか!!
何でこんなことになったんだ?
確か父さんの本以外でどんな推理小説読んでんのかって聞いたら…
『色んなの読んでるよ?もちろん工藤くんの大好きなホームズもね!』
そうだ!
それでホームズの話始めちまって、ポピュラーな話は知ってたからだんだんマニアックな話になって…
何処までホームズのこと知ってんのかムキになっちまったんだった……。
何やってんだよ、俺は。
みょうじのこと知りたいからって昼休み誘ったってーのに自分が話の主導権握ってどうすんだよ、って話だよな。
あれ、話逸らす為に計算でやってたら怖ぇけど、たまたま、だよな?
よし、次こそみょうじの話ちゃんと聞かねぇと。
確か今は放課後蘭の家で勉強会してんだったよな?
とりあえず俺も混ざれねぇか蘭に聞いてみっか。
(君に近づきたいのに近づけない)
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