(番外編)新一side
リビングで推理小説を読んでいると呼び鈴が鳴った。
「新ちゃーん出てー!」
「わーったよ」
さっきから台所で何かしてる母さんに言われて玄関を開けると俺より少し年上に見えるすごく綺麗な女の人が立っていた。
服装を見る限り、これからどこかへ行くらしい。
父さんたちそんなこと言ってたか?
『こんばんは、工藤くん』
へ?
何か聞き覚えのある声だった気が…
「やぁ、なまえ君。よく来たね」
なまえ?
なまえって…もしかしてみょうじか!?
嘘だろ?
女って服装と髪型ちょっと変えただけで、こんなにイメージ変わんのかよ!?
っつーか何でそんな格好してんだ?
「話してなかったかな?今日はなまえ君と食事をする日だと」
「聞いてねぇよ!!」
っつーことはさっきの母さんもグルかよ!
俺がお洒落して来たみょうじに気付くかどうか反応確かめてて、まんまと気づかなかったってわけか。
んなもん分かるかよ!
俺が普段見てるのは制服姿であって、私服姿すら見たことねぇってのに!!
着替えをしながら嵌められたことに苛々して、下に降りたらみょうじにも文句言ってやろーと思ってたのに
『工藤くんカッコイイね。制服姿とユニホーム姿しか見たことなかったから見違えちゃった』
なんて笑顔で言われたから、なんか一気に毒気を抜かれた。
本当にこいつみょうじか?
いや、みょうじなんだろうけど。
それから父さんと三人で珈琲を飲みながら母さんの支度を待ってたけど、俺は父さんと楽しそうに話すみょうじをずっと眺めていた。
んだよ…
俺にはんな笑顔してくれたことなかったじゃねーか。
何か面白くなかったから、車に乗ったときにみょうじにさっき言えなかった文句を言おうとしたら母さんに止められた。
何だよ!
母さんもみょうじの味方かよ!
「母さんだってそんな素振り全然見せなかったくせに」
そうだよ。母さんだったらみょうじと飯行くんだって騒ぎそうなもんじゃねぇか。
『有希子さん、あたしが工藤くんに見つけてもらったって先生に連絡した時からずっとテンション高かったよ?』
「はぁ?!」
『っていうより、今日の発案者、有希子さんなんだけど…』
なんて不思議そうにみょうじに言われた。
マジかよ!?
全然気づかなかった…
「つまり、お前の観察力がまだまだだというわけだ」
チクショー。絶対俺で遊びたいが為だけに黙ってただけだろ!?
『そんなにあたしとの食事が嫌だった?』
「え?いや、違っ…」
哀しそうな表情をしたみょうじに慌ててたら、母さんが悪ノリし出した。
「みょうじ、だから俺は、」
「そんなに嫌ならお前は帰るか?父さんたちはこのままなまえ君と食事に行ってくるから」
だから父さんも母さんもちょっと黙っててくれよ!
みょうじに弁解出来ねぇじゃねぇか!
『ねぇ、工藤くん』
「んだよ」
しまった!
父さんと母さんにイラついてたら、俺、みょうじにまで冷たい態度とっちまった。
『あたし、工藤くんと食事に行くのも楽しみにしてたんだよ?』
内緒話でもするように楽しそうに言われたから、思わずみょうじの方を見たら、ニコッと笑って外に視線を向けてしまった。
その横顔も綺麗で…って何考えてんだ?
何で俺はみょうじのことになるとこんなに余裕がなくなんだよ。
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