小説 | ナノ




前回の妄想設定で、竹→食←文のカップリングに挑戦。

竹→食編。
唐突に始まり唐突に終わる小話有り。



◎ きっかけ編

尾浜が友人らを兼部という形で演劇部に巻き込んだことで、何とか同好会への降格を免れた演劇部。
しかし、部員の殆どが仮部員という状態での部活動存続を認めてもらう条件として、学校側から『数ヵ月後の演劇コンクールに出場すること』を提示されてしまう。

只在部しているだけでいいという当初と違う話に皆が嫌がる中、尾浜の必死の頼み込みと、仙蔵からの軽い脅しによって演劇コンクールに向けた練習が始まる。
副顧問として食満も協力参加する。

尾「先生ー、ヒロイン役どうしましょうー?」
仙「仕方が無い…。食満先生に女装させて誤魔化そう」
食「アホか!!」

とか、色々ふざけたり騒いだりもめたりしながら、練習開始。






ここで唐突に小話スタート。

尾浜や友人達に巻き込まれるような形で演劇部に入部し、コンクールに向けての稽古をする羽目になってしまった竹谷少年の中の、ちょっとした葛藤や悩みが浮き出てくる。
そして食満先生との初接触話です。












普段は学校行事や式典などの際に使用される、本校舎からは離れた会館の中。
退校時間をとうに過ぎ照明が落とされたその中はがらんとして薄暗く、ずらりと並んだ座席の所々に散らばる自分達の荷物以外には人気も何も無い。


「…はぁ」

そんな中、通路に程近い座席の一つに沈みこむように座り込んだ竹谷は、前方から漏れる強い照明の光を避けるように俯いて、全身に溜まった重い空気を吐き出した。





「どうしたの?」

そんな竹谷に、手洗い場から座席の間の通路を歩いて戻ってきた不破が声を掛ける。



「ちょっと休憩…。先生と尾浜があの状況じゃ、暫く練習再開出来なさそうだから…」

ぐったりとしてそう言って、竹谷が会館の中で唯一照明に照らされたステージを指差す。
不破がその指先を追って視線を向ければ、ステージ上に立つ尾浜と、座席の最前列中央に立つ仙蔵が何かを言い争っている姿があった。



「またやってるんだ…」

仁王立ちで端整な顔立ちを顰める仙蔵と、身振り手振りを交えて何らかの主張を繰り返す尾浜の姿。その見慣れた光景に、不破は苦笑を溢す。

周囲のことが意識から飛ぶ程真剣に何かを言い争う仙蔵と尾浜。
寄せ集めの演劇部員達の中でたった二人の正式な関係者、そして飛び抜けた演劇への熱意を持つ二人のああいった主張のぶつかり合いは、通常の部活動後の居残り練習をやるようになってからの此処数週間で、既に見慣れたものだった。



「あれは今回も長そうだね。再開する感じになったら声掛けにくるから、竹谷はここで休憩してなよ」

「…そうさせてもらう」

熱い二人の演劇論のぶつかり合いには、ただの急募の仮部員である竹谷達程度では口出す隙も、半端に仲裁に入る隙も無い。
尾浜と仙蔵があのような状態になってしまえば、竹谷達はただ二人がお互いの主張の妥協点を見つけ合い沈静化するのを待つしかない。

だが、この練習に参加する以前にも、元々所属するサッカー部の練習で散々に走り回り体力を消耗してきた竹谷にとって、いつ終了するのかも分からないやり取りをただ眺めて再開を待つというのは、体力的にも精神的もかなりキツイ。

少しでも体力を温存しようとステージから離れた座席の方へと避難してきた竹谷の心情を察した不破の言葉に有り難く甘えることにして、自分の片割れが待つ舞台袖へと一人向かう不破をひらりと手を振り見送って、竹谷は再び腰掛けた座席へと沈みこんだ。



座席へと凭れ掛かったまま、何とはなしに竹谷はステージへと向かう不破の背を視線で追った。
不破がステージへと登ると同時に、未だ変わらぬ勢いで口論し合う尾浜と仙蔵の二人を舞台袖に下がって暇そうに眺めていた鉢屋が傍に寄ってくる。
ひそりと、鉢屋の耳元へと不破が何かを囁きかけ、鉢屋もまた不破へと耳打ちし返す。
そうして二人は笑い合い、並んでその場へ腰掛けた。

そこに、反対の舞台袖から何かの衣装らしき布の束を抱えた久々知が歩いてくる。
不破が手招きし、気付いた久々知が二人へと歩み寄る。
久々知が近付くと共に鉢屋が不破の方へと僅かに身を寄せ、空いたそのスペースへと久々知が腰を下ろす。
そうして、三人で何かを話し始めた。



皆が集まる舞台から一人離れた竹谷には、周囲が薄暗い分、煌々とした照明に照らされる舞台もそこに居る皆の姿がはっきりと、鮮やかに見えた。
疲れた目には少々辛いその眩しさから目を逸らすように、竹谷は再び背もたれに体重を掛け直し、目を閉じた。










耳に届いた声で竹谷が目を開いた時、舞台の上では皆の稽古が再開していた。

少し目を閉じるつもりが、すっかりと居眠ってしまっていた事に気付いて、竹谷は慌てて席を立とうとする。


「おー、起きたか」

「!?」

けれど、不意に掛けられた声に驚いて、立ち上がり損ねてしまう。


「ごめんごめん、そんなに驚くなよ」

恐らく大げさな程に身体が反応してしまったのだろう。
いつの間にか竹谷の隣に腰掛けていた、演劇部の副顧問である食満は、宥めるように竹谷に笑いかけた。





竹谷の顔に、さっと僅かな朱が走る。

「お前があんまりぐっすり寝てたからな、呼びに来た不破がもう少し休ませておきますってさ」

それに気付いているのかいないのか、食満は変わらず気さくな笑みを浮かべたまま話しかけてくる。


「す、すんません…」

「俺に謝んなって。ってか、誰にも謝らなくていいぞ。お前ら殆ど皆、別の部活との掛け持ちなんだし、そん中でもお前と久々知は運動部で特にキツイだろうからな。こうして休まず来てるだけで偉いよ」

「…そんなこと、ないっす…」

馴れない食満との会話に緊張し、おまけに、いつから隣に座っていたのかは分からないが確実に自分の気の抜けた居眠り姿を目撃されていたのだろうという気恥ずかしさに萎縮して、気さくに話しかけてきてくれる食満に対して、竹谷は短く素っ気の無い返事しか出来なかった。





食満は、演劇部の副顧問である美術教師であり、正規の部員と顧問であるあの二人同様、この部の存続がかかった今回のコンクールに力を入れている一人だった。

部員が少なく、舞台装置や小道具製作に回せる人手が無い分その全てを一人でこなしている食満は、自身の監督する美術部の活動終了後にこうして時折練習の様子を見に来る。

今も、竹谷の隣に座る食満の更に隣の座席には、様々な小道具が入った箱が置いてある。
いつもの白いツナギ姿に、絵の具のついた指先、何処か疲れたような響きを感じさせる声。それらを見れば、演劇部の為の作業からそのままここに直行したのだろう事もすぐに分かる。

先程はああ流してくれたが、そんな食満が傍にいると言うのにいつまでもここで練習をサボっている訳にはいかない。
練習に戻らなければと、竹谷は改めて舞台の方へと視線を向ける。



けれど、相変わらずに眩しい程の照明に照らし出された舞台の上を。
そこに登壇しそれぞれの役を演じる友人達の姿を見て、何故か竹谷は席を立つのを躊躇した。

隣に腰掛け、同じく舞台上の練習風景へと視線を向ける食満から叱咤を受ける前にと心は急くのに、肘掛についた手には力も入らない。
ただぼんやりと、流れ進んでいく舞台上の練習風景を竹谷はその場で見ているだけだった。





「…練習を始めた当初はどうなることかと不安だったが、短い間で結構形になってきてるもんだな」

そんな竹谷に、再び食満が声を掛けて来る。


「…そうですね」

ぼんやりと、何処か現実離れしたような心地を感じながら、竹谷は言葉を返した。



「最初は揉めてたよなぁ。誰がどの役やるとか」

「ありましたね。食満先生も、巻き込まれそうになってましたし」

「あれはないよなぁ。俺をいくつだと思ってるんだっての。高校生と並んで同世代役なんていくら何でも無理があるだろ。…そもそも俺教師だし」

「いやぁ…」

食満の愚痴へと返す言葉を濁し、ちらりと竹谷は隣を盗み見た。



穏やかな笑みを浮べて舞台を見遣る食満の容姿は、はっきり言って若い。
教師らしくないそのツナギ姿や、所々につけた絵の具の痕がよりそう見せているのかもしれないが、比較的体格の良い竹谷とこうして並んでいれば、同世代と言っても違和感はあまりない。

また、そう思うのは外見のせいだけではなく、気さくで生徒達と目線の近い食満は、歳の近い兄のように生徒皆から慕われている。
選択で履修するかしないかを選べる美術を受け持つ食満の授業を、竹谷は一年の頃の僅かな期間しか受けたことが無い。
けれど、その短い間の授業の様子や、時折廊下などで見かける食満と生徒達との様子からも、随分と生徒に好かれ、また溶け込んでいるなとよく感じていた。

案外、食満を変装させ劇に紛れ込ませようとしたあの時の仙蔵の提案は、本気だったのかもしれない。





それからまた暫く、食満と竹谷は言葉を交わしていた。
主には食満が何気ない話や質問を投げかけ、それに竹谷がぽつりぽつりと返事を返していくだけの、随分と言葉の量に差のある会話ではあったが。

その間二人の視線は、時たま竹谷が食満の様子を盗み見る以外では、ずっと練習の続くステージの方へと向いていた。

尾浜を中心として、仙蔵の指揮の下場面ごとに進められていく練習風景。
竹谷の演じる役が登場するシーンを省いて、それは進んでいく。

友人達はそれぞれに
台本片手に何処かぎこちなく
又は演じているというよりは素そのままの淡々とした調子で
又あるいは正規の部員である尾浜と同等の演技力で役になりきって、と。
バラバラではありがなら、皆自分の個性を滲み出しながら、照明に照らし出されたステージの上に立っている。

それをぼんやりと眺めながら、やはり竹谷の身体は、無意識は、その中へと自分が入っていくことを躊躇していた。





「…竹谷?」

不意に会話が途切れ、食満が声を掛けて来る。



「お前、今日はどうした…?部活で疲れたか?それとも…、何かあったか?」

先程から、この場に漂う気まずい間を埋めるように会話を続けていた食満が訊ねてきた。

食満が竹谷の躊躇に気付いている、ということに気付いていた竹谷は
「何かがあったのか」という食満の問いかけに対して、「いいえ…」と首を振って返した。



別に、特別な何かがあった訳ではなかった。
疲れてはいるけれど、それは自分と同じ運動部である久々知とて同じだし。
帰宅部である不破も、この練習に参加する前にはいつもと同じように図書室の司書の先生の仕事を手伝ってきたと言っていた。鉢屋は鉢屋で今日は生活指導の教員に捕まって、随分と長い説教をされたのだとぐったりとしていた。

今日も自分や友人達は何も代わらず、いつも通りの毎日だった筈だ。

けれど、何故か先程のふとした一瞬に、竹谷の中のある感情が溢れた。それが、竹谷の動きを止めていた。








「あいつらは…凄いですよね」

舞台の上の友人達を見遣り、気がつけば竹谷は呟いていた。


竹谷は、この学校に入学してから出来たあの友人達を、気の良い連中、良い友人達だと思っていた。

学校一の天才と名高いが、それと同時に大の問題児である鉢屋。
非の打ちようのない容姿と、学年首位を鉢屋と取り合う秀才で教員からの信用も厚いが、何処か一般的な常識から外れた空気を持つ久々知。
どんな場所でも、どんな環境でも自分を主張でき、持ち前の行動力でこうして皆を集め、部の為に必死になれる尾浜。
そして、誰でも受け入れるような大らかさを持っているようで、その実他人を寄せ付けない不思議な壁を持つ不破。

四人全てが、個性の塊のような連中。
この学校内でも、同学年、上下級生問わず名が知れているような連中。


だからこそ、何故自分が彼らの友人なのか、疑問になることがあった。
そんな彼らと、何の個性も無い自分が友人であることが、とてもおかしなことのように感じる瞬間が竹谷にはあった。





「お前だって有名だぞ。『あの』七松先生のスカウトを断った初の生徒だろ、お前は。一部の上級生の間じゃ、お前は勇者だ」

食満が、先の竹谷の呟きに対してそう言った。
竹谷の様子を気遣って、敢えて悪戯気に笑みを浮べてみせる食満の言葉に、竹谷もまた軽い苦笑を返して頭を掻いた。



けれど、食満は竹谷のその苦笑を見て浮かべた笑いを潜め



「…だからかな、お前ははっきり否と言える性質の奴なのかと思っていたんだが。…もしかして、この演劇参加、本当は嫌だったのか?」

そう問いかけた。







ここで唐突に小話終了。
続き〜



個性の強い友人達にちょっとしたコンプレックスを抱く竹谷少年と、それを食満先生が気付いて指摘したところで一旦この場はうやむやに。

そして、コンクールに向けた練習は続いていき。
食満先生と竹谷少年は時折会話を交わしますが、あまり踏み込んで話をすることも出来ず。
竹谷少年は、友人や演劇練習、そして食満先生との先日の会話に対して、形にならないもやもやとした感情を抱えたまま日々を過ごす。





そうしてまた暫く経ったある日の放課後、竹谷少年は食満先生に呼び出される。

呼び出されたのは美術室。
目の前には一枚の真っ白なキャンバスとずらりと用意された画材。
何故か自分が着ている物の他に、もう一着のツナギを持っている食満先生。


食「よし、着替えろ」(いきなり制服脱がす)
竹「え!?」(びっくり戸惑い)
食「俺の予備だ。あー、お前むかつくくらいに体格いいな。ちょっときついが我慢しろ」
竹「ちょ!?」(赤面てんぱる)
という感じで、問答無用でひん剥かれて、ツナギ着せられて、画材渡されて


「お前の好きなようにそのキャンバス使ってみろ!」

と指示されて、一人美術室に置いてかれる竹谷少年。


訳が分からず、でも先生に言われた事だから勝手に放り投げて帰ることも出来ず(そもそも、制服を食満先生に持っていかれて帰れない)
戸惑いながら、とりあえず傍にあった画材を使ってキャンバスに向かってみる。





暫く経って。
気が付けば、思った以上に真剣に、夢中になってキャンバスに向かっていた竹谷少年。

隣の準備室から(頃合を見ていた)食満先生が様子を見にやってくる。



食「どうだー」(突然登場)
竹「!!いや…、あの、全然…」

口篭って絵を隠す竹谷から、隙を見てキャンバスを取り返す食満先生。


食「…」

黙ってキャンバスを眺める食満先生。
何だか落ち着かない竹谷少年。段々我慢が出来なくなってきて、話しかけようとしたその時


食「綺麗な絵だな」

と、とても嬉しそうな笑顔で食満先生に振り返られ、褒められてしまう。



竹谷の絵は、何か対象を描いたものではなくてただ色を塗り重ねただけ。
幾つもの色を塗り重ねて、その上から全体に薄らとした緑が重なっていて、とても抽象的な絵。


食「お前、森とか山とか、自然のもの、好きか?」
竹「?はい…」

と言う感じで、絵を見て、色々なことを聞いてくる食満先生。
好きなもの、好きな色、逆に苦手なもの。
無意識にただ色を塗り重ねただけのつもりの竹谷少年は、次々自分のことを言い当ててくる食満先生にびっくりしながらも、質問に答えていく。

その内、この部分は何に見える?とか、ここら辺の色の具合はなんか尾浜っぽいなとか、キャンバスを眺めながら取り留めの無い雑談に話は移っていく。





そして、雑談も粗方終わって
結局これは何だったのかと食満先生に問う竹谷少年。

食「俺なりのやり方でお前に自分のことを教えてやりたかった」

という食満先生。



尾浜や鉢屋などの個性的な友人達に挟まれてその友人達を繋ぐ緩和剤の役割をずっと続けてきて、皆にとっての自分の必要性はそれだけなのだと思い込むようになっていた竹谷少年。
友人達の個性とぶつからないように自分の個性を押さえ込み、友人達を羨望の目で見続けるあまりに、いつの間にか自分には何も無いと感じるようになっていた。


「はっきりとした自分の世界を持ってる奴は、その分だけ外側の世界との距離感を掴むのが難しい。自分『だけ』の世界に引き篭もってしまいがちになる。だからお前みたいに間に入ってくれる奴を求めて寄って来るんだ。俺もそうだったから、よく分かる。
でも、だからってお前はあいつらを繋ぐことしか出来ないとか、しちゃいけないとか思う事はない。お前にだって、お前の意思と世界があるんだ。お前だけの個性があるんだ」

「こんなに綺麗で、いっぱい個性の詰まった絵を描ける奴に何も無いなんて、ある筈がないだろう?」


等々。
食満先輩の実体験も含めた話を色々聞いて、無意識の内の、自覚のなかった悩みにも漸く気付く竹谷少年。
(実は、ただ逃げただけの小平太のスカウトの件で自分が校内で有名になっていたという事も、葛藤とストレスの一つの原因になっていた)



その上で

「演劇参加、本当は嫌だったのならもう一度考えろ。例え断っても、お前の友達は離れていかない」

と食満に諭され、演劇練習参加の件から、もう一度良く考えることに。





◎ 自覚編

食満先生と話をして諭されて、改めて考えて。
演劇練習には継続して参加し、一緒にコンクールを目指すことを。
小平太のバレー部への誘いも、コンクール終了後にもう一度改めて話をしに行くことを。
流されて逃げるのではなく、ちゃんと自分で考え行動することを決意する竹谷少年。



未だ友人達に対してふとした瞬間にコンプレックスを感じる事はあれど、色々とすっきりし改めて練習にも身が入り竹谷少年。コンクールに向けて徐々に気迫の高まっていく部員達。

そんな中で、色々なことを気付かせ考えさせてくれた食満先生に、竹谷少年は少しずつ懐き、ちょくちょく準備室に顔を見せ、手間のかかる大道具の製作などを手伝うようになっていく。

親しくなるにつれ、食満先生の方からも元々気さくだったのが、もっと気を許してくれるようになっていく。

大柄な体格をして食満先生の後をついて回る姿を『ワンコ』と友人達に揶揄されながら、何故か食満の傍に居る時に、以前のストレスのもやもやとはまた違う奇妙な感覚を感じるようになっていく。








ぐあっと端折り。演劇コンクール終了。


何とか無事参加出来た演劇部(仮)の面々。
ぎりぎりの順位だが入賞も果たし、部の存続も決定。
皆で喜んで、でもこれで特別練習も終わりになることを少し寂しんで、一旦解散となる。


放課後の特別練習は終了しても、兼部ではあっても竹谷少年たちも部員ではあることに変わりは無いので、時折皆で演劇部へ顔を出し、話をしたり、お茶会をしたり、また一緒に舞台やろうと誘ってくる尾浜&仙蔵に迫られたりと、平穏な毎日。

それでも、特別練習のあった頃、毎日のように顔を合わせていた時期よりは、食満と接する時間は格段に減り、竹谷少年のもやもやは更に募っていく。





ある日の放課後。
時折開催の演劇部室での御茶会に食満先生を誘ってくる役目に任命される竹谷少年。
隠そうとしているが嬉しがっているのがバレバレ(そんなワンコな竹谷を生温かく見送る友人達)


食満先生のいる美術準備室を訪れ、声を掛けて中へ入ろうとするが
扉のガラス部分から、中に食満先生以外にも誰かがいることにも気付いて様子を伺う。


居眠りでもしているのか、扉側に背を向け動かない食満先生と
その食満に何かをしようとしている物理教師潮江先生。

二人の顔が重なった(ように見えた)ところで、びっくりして逃げ帰る。





逃げ帰ったお茶会では、食満先生を連れてこなかったことを非難されながらも、余りにも竹谷少年の動揺が凄まじかった為、皆深くは追求してこなかった。

動揺したてまま自宅まで帰宅し、その日一晩は

「え、何?あの二人ってそういう関係?」
「でも仲悪いって噂じゃないっけ?」
「あれ?でもそういえば、コンクール前の特別練習にも見回りだっていってちょくちょく潮江先生顔出してたような…」
「そもそも男同士じゃん…?」

と言う感じで、ぐるぐるもやもやしながら過ごす。





後日、竹谷と顔を合わせても何も変わった様子はない食満先生。そして潮江先生。

でも、日が経つごとにもやもやが募り続けていき、言動も怪しくなっていき
心配した(気味悪がった)友人らから話を聞いた食満が

「悩みでもあんのか?言いにくいことなんだったら、俺ん家に来るか?」

と、予想外の誘いを受ける。





そのまま断りきれずに食満の家(マンションの一室)に到着。
てんぱりまくり、ぐるぐるもやもやしっぱなしでいる所に親身になって話し掛けられ
半ば思考放棄状態で、先日の一件、文次郎との関係を問いただそうと口を開いたところに





文次郎、帰宅。





「ああ、説明し忘れてたが、こいつ(文次郎)もここに住んでる」

皆には内緒にしといてな

と、あっさりと同居を発表される。


許容オーバーで竹谷少年の脳内爆発。










...

…みたいな。



設定というよりも、お話を書く前のプロットに近いですね。


ここまででようやく自覚へ至り、きっとこの後に竹谷少年の目覚めがに来るのだと思います。

食←文編へ続きます。



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