べんかいする 急患が何人か来てはいるが、どちらかといえば忙しくない日だ。 そして先生の横でサポートするのが先輩の担当だったらしい。 黙々と何事もなかったかのように仕事をしている宮田先生。 私の発言に引いてないのかな?どうでもいいとか? あの発言のことをどう思っているのかこの1週間気になっていたし聞いてみようかな… 虫の鳴き声が外から聞こえつつ、先生の横顔をじっと見ながら考える。 「俺の顔に何かついていますか」 宮田先生がカルテを記入しながら私に話しかける。 「え!?あ、いやぁ、何もついてない、です…」 段々小声になりつつ答える。なんでこの人こんなに普通なんだろう。 本当に気にしていないんだろうか。それとも逆に気にしすぎて普通な態度を取ろうとしてるんだろうか。宮田先生にはちっぽけな事でもう覚えてないとか? それなら聞かないほうが絶対マシだよね。いや、でも覚えてたら嫌だなあ。聞く?聞いちゃう?今だったら診療室2人きりだし、言うなら今だよね…!! 「この間、変なこと言ってすみませんでした」 そういうと宮田先生が手を止めて顔をこちらに向ける。 え、やっぱり覚えてないとか?やっぱり宮田先生には小さな事で私の考えすぎとか?むしろ自分から話しかけてきて変なやつだって思われてたり!? 私は冷や汗が出そうになりながら宮田先生の顔を見つめ、宮田先生は相変わらず無表情で私の顔を見る。 「『この間の変なこと』って『好きなだけどうぞ』、ですか?」 と直球につっこまれる。濁されずに言ってくると思わなくて宮田先生から目を逸らす。 図星か、というようにカルテに顔を向け直す。 「まあ…あんな発言、他の人が聞いたら股の緩い女だなと思うんじゃないですかね」 ですよねーーー!自分だってあんな言葉が出てくるなんて思ってなかったし。痴女まではいかないにしてもそういう風に捉えられちゃうよなあ。というか結構宮田先生口調きつくない?痴女って言われるよりかマシだけど股が緩い女って…いや、まあ私の言葉が結構酷いし先生だし年上だし、そんなこと言えないけど。 深いため息をしながら宮田先生に向けてた体を逸らす。 「…みょうじさんも自分の発言にびっくりしていたように見えましたけど」 「!!そう、そうなんです!触られたことに対して気にしないことを伝えようとしたら思わず…!」 宮田先生のフォロー(?)に食い込みがちに答える。なんだ気づいてくれてるじゃん!宮田先生よく観察してるなあ。 誤った発言だと宮田先生が気づいてることに安堵して口元が緩む。 「でも、そんな発言が出るってことは欲求不満なんじゃないんですか?」 そんな発言をしながら宮田先生が体ごとこちらを向くのが視界の端から見えた。 何を言ってるんだ、とこちらも体ごと宮田先生の方を向いて目を合わせる。 「そんなに欲求不満なら、俺が相手になってあげましょうか」 |