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尾形百之助


*尾形が逆トリップする話
*を書きたかったけど力尽きた1話
*尾形さん、杉元(崖)に肩と顎をやられて意識不明になってた時期です
*名前変換なし






大学1年からずっとバイトしていた居酒屋をついさっき辞めた。
大学も出来るだけ学費免除出来るところに行って、奨学金も借りたけど使わないように貯金して、暇な時間を出来るだけお金を稼ぐことに費やして3年半。
バイト先にいた同い年の子が就活でみんな辞めていく中、気持ちも焦るけど就活しながらでも続けてよかったと思う。
店長のご好意で金曜なのに開店を1時間ずらしてもらって、私のために送別会を開いてくれた。可愛いブリザードフラワーとお菓子を貰って手を振って帰路につく。



マンション入り口のロックを解除しながら腕時計で時間を見る。20:34。
この花を玄関に飾って、今日から湯船を張って、TVを見ながらご褒美用に買ってたアイスを食べよう。
玄関の鍵を開けて、靴を脱ぎながら電気をつける。
靴箱の上に置いてある鍵入れに鍵を入れて、リビングのドアを開けて床に荷物を置く。そのまま脱衣所の洗面台に向かって手洗いとうがいをしながら今日の送別会を思い出す。
一緒の時間によく入ってた人だけじゃなくてあんまり一緒に入った事ない人も参加してくれて有り難かったな。また今度仲のいい人たちで送別会してくれるらしいし。いいバイト先だったなぁ。店長のご飯もすっごく美味しかった。
鼻歌を歌いながらお湯張りのボタンを押して、荷物を直そうとリビングへ向かおうと後ろを向いた。




ゴンッという大きな音が聞こえると同時に頭と背中が痛みが走る。息ができない。
衝撃で目を瞑ったが、薄眼で何が起こったか確認する。
この家には私しか、住んでいないのに、知らない男が居る。
片腕で胸元を固定して、空いてる右手で首を絞められてるらしい。
「っ、」
苦しくて男の腕を離そうとするが上手く力が入らず両手を添わせるくらいしか出来ていない。
無表情の目が死んでる少し小柄の男は軍服みたいな、肩に27と書かれた変な服を着ている。
殺されるかもしれないのに、何で私こんなに変に冷静なんだろう。


「お前がここに連れて来たのか」
男が聞いてくる。
「この部屋はお前の部屋か」
続けて聞いてくるが、手の力が強くて顔を動かせないし声も出ない。
「っ!ごほっ」
私が喋れないのに気づいたみたいで腕を離してきたが、自覚してる以上に怖かったらしく、上手く空気を吸えずにその場でへたり込んだ。
「おい、俺の質問に答えろ」
急に空気を取り込めた事でむせている私の頭上から声が聞こえる。
答えられなくしていたのはどこのどいつだ。大体窓も玄関の鍵も全部閉じて外出したのにどうやって入って来たんだ。
恐怖よりも怒りが勝る。


「…勝手に入ってきたのはあんたじゃない」
聞こえなかったみたいで「あ?」としゃがんで聞き返してくる。
顔を上げ睨みつけながら男の顔を見る。男は先ほどと変わらず、光がない目でこちらを見下す。
「ここは私の家です。鍵を閉めてたのに勝手に入って来たのは貴方じゃない。不法侵入ですよ、強盗だか殺人鬼か知りませんけど、警察呼びますよ!!」
だんだんと声を荒げながら目の前の男に怒鳴った。
男はうるさそうに目を細めため息をつきながら帽子を取り頭を撫でるとしゃがみこみ、私と視線の高さを合わせ、ゆっくりと頭、髪の毛を掴んだ。

「今ここで俺がお前を殺しても別に構わないが」
首に手を伸ばしながら、淡々とした口調でどうする?と聞いてくる。
先ほど首を締められた時、この男は手加減しているとどこかで確信できた。そしてこの男が手加減した上で私はさっき大した抵抗もできずただ首を絞められただけだ。
段々冷静になり、今私が不利な状況に気付き恐怖が襲う。男の手が私の首を捉える。
感情を読み取られないように「殺してもいいですけど、うちに大したものは何もありませんよ」と言い返す。
私の発言を聞いてるのか聞いていないのか分からないが、力を入れてくるわけでもなく、私の目を見てくる。


「気が変わった。少し話をしようぜ。」
手を離してにやりと笑う男。ふ、と少しだけ安心した。