吾人は…………見捨てられたのだな!?

 次、目覚めた時は主君の胸の中だと思っていたのに、なんたる仕打ち! いや、そもそも主君は、吾人が意志ある護符(インテリジェンス・タリスマン)である事を認識しておったのか、怪しいものがある。

 普通は護符は一回こっきりの使い捨てか、一定期間しか効力の発揮されないかの、二つに一つ。吾人は作り手の特殊な依頼の為に、自動魔力回復が備わっている。それを知らなければ、若様の危機に効力を発揮して、吾人は砕けたと思われたか……。

 え、まじで? 吾人、このまま、野となり山となるしか他にはないのか!?

 今や吾人の周りを装飾していた、金飾りも若君を守る結界の起点として利用してしまった。つまりは、吾人は現在、月水晶(ムーン・クリスタル)の吾人だけ。

 月水晶自体は魔術師や祈祷師・占師には、とても意味あるものだが、普通の人が見れば単なる水晶。青玉(サファイア)のような貴石の美しさを吾人は持ち合わせていない。つまりは、拾って貰える確率の低下。

 本当に、吾人の石ころ生活始まるのか!? そうなのか!!?




 思わず、戦慄いていた時だった。吾人の上空から迫り来る、影。それは徐々に近付き、吾人の前に降り立った。それは____鳥だった。

 ひょい、ぱく。

 擬音語で表現すれば、きっとそんな動作音だったに違いない。哀れ、吾人は鳥っぽいのに拾われて、空の旅へ。

 後に知った事だが、この鳥____ソチョシーは、光り物を集める習性のある魔鳥で、地球で言う所の烏に近い。まあ、足が六つで頭が四つに翼が八つの変な鳥である。そんなソチョシーの習性は冒険者や狩人の間に、知られているので、一応まだ生還の可能性はあったのだ。

 ただ、その時には、このまま空中遊泳(ダイブ)して地面に叩き付けられたらどうしようと、肝を冷やしていた吾人であった。




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150806 なろう掲載
160508 転載


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