さて、ポリスから作られた吾人であるが、ポリスがそのまま吾人の主となった訳ではない。吾人はポリスに依頼してきたとある人物の為に作り上げられたものなのだ。

 とある人物ことマルセルはポリスの親しい友人である。ただ形容詞を付け足すのならば、『辛辣』とか『しすこん』であったが。顔は掘りが深く、しゅっと鼻筋は通り、切れ長の瞳は、さぞ女人にもてはやされたに違いない。強者であると普段女人が全くもって寄り付かないポリスの工房にまで突撃してくるのだから、恋する女人は強いこと強いこと。

 あぁ、話が逸れた。マルセルは吾人を妹君に贈るべく、ポリスに依頼したのだ。だから女人が普段使いできるようなさりげないおしゃれ(?)なデザインを求めていたらしい。ただ何分、ここにいるのは女人のおしゃれに縁のない男二人に自我を持ち始めたばかりの吾人のみ。デザインは難渋した。

 ひと月以上の間、あーでもない、こーでもないと、良い年した男が額を付き合わせている姿は、滑稽さは否めないが、微笑ましいものもある。

 なんでもマルセルの妹君がこの度、遠い街に嫁入りをするのだそうだ。

 目に入れても痛くないほど可愛がっていた歳の離れた妹の門出。妹君が幸せそうに笑うのは嬉しいが、相手の男が気に入らないと管を巻いておった。「あのやろー」とか、「ぶっとばす」と、物騒極まりない事を行っているが、大丈夫なのだろうか。

 ポリスがひっそりと吾人に洩らしていたのを聞いたら、どうもこの発言はマルセルなりの祝福であるらしい。まあ、結婚式を本気で祝うつもりがないのならば、態々ポリスに頼んでまで、吾人を依頼するなどしないだろう。

 現に、あの物騒な物言いの最中でもちょっとだけ口元が笑っていたのだとか。全くもって人間というのはよく分からないものだ。

 ただ、吾人はマルセルが妹君の幸せを、本気で願っていることだけは、心に留めておいた。






150716 なろう掲載
160508 転載



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