どうなされた。うむ、寝付けぬか。生憎、吾人(ごじん)は“眠り”というものが、よく知らぬのでな。あどぶぁいす、であったか? 出来ぬ身だ。

 ふむ。寝物語か。其方(そなた)の母君が、読み聞かせたような話はよく知らぬ。桃太郎とか、しんでんら、であったか? だったら、其方の方がよく知っておろう。

 そういう話でなくてよいのか? 吾人の昔話でよいと。ただ吾人の人生は、子供に聞かせるには、少々血腥(ちなまぐさ)いのだが……。

 『見た目は子供、頭脳は大人』と? 大人であるのならば、無闇矢鱈と女子(おなご)の衣服の裾を捲るのを止めてから言うのだな。

 都合が悪くなると、其方はすぐにしらばっくれる。まぁ、よいか。其方程、吾人と波長が合う存在など、もう一度遇(あ)うのは難しかろう。

 なぜ判るのか? なぁに、経験という奴だ。其方よりも遥かに長生きしておる。吾人の人生を“生きている”と称するかは、謎であるが。

 ここで其方と巡り会ったのも、“縁(えにし)”と云うものだろう。あまり語る事は上手くないのでな。容赦しろ。





 これから語るは、吾人の物語。

 時に剣(つるぎ)となり数多の命を屠(ほふ)り、時に聖剣と称され魔王を討ち取り、時に人を惑わす腕輪となり、時に人を守る盾ともなった事がある。

 幾人もの人の手を、時を、土地を、世界を、渡り歩いた、そして渡り歩く、吾人の物語だ。



150701 なろう掲載
160508 転載


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