これは私の子供の頃の話なんですけれどもね
私の家の庭に昔大きな桜の木があったんです
ほら、そこに幹が見えますでしょう?
今は去年の火事で焼けてしまい幹しか残っておりませんけどね
あぁ、話が逸れてしまいましたね
私が子供の頃祖母がとても大事にしておりました桜なんですよね
何でもココにお嫁に来る時に植えられた木なのだそうです
祖母は私が小学校に上がる頃に亡くなったんです
私はいわゆる『お婆ちゃん子』というやつでとっても泣きました
今でも憶えていますとも
そういう風に泣いていると疲れて眠ってしまったんですよね
目がさめると日が沈み、空が真っ赤に染まってました
すると庭の方から誰かの泣く声が聞こえたんですよね
不思議がって見に行くとあの桜の木の根元にしゃがみ込んでさめざめと泣いてたんですよね

   犬が

あまりに悲しそうに泣くものだから幼い私は『どうしたの?』と声をかけたんです
その犬は驚いた顔をして私を見ました
そして小さく答えました
『あのお方がお亡くなりになられたのです』といいました
私は小さいながらも一生懸命慰めました
そしてその犬とは分かれました
その犬と次ぎ会ったのは夢の中です
あの犬が真っ白い世界に出てきて私に近付いて『起きて下さい!』と言われました
私はがばりと起きたのです
すると台所から火の手が上がりもくもくと煙りが立ち篭めているところでした
私は慌てて夫を起すと庭へと避難しました
母屋に接っする程伸びた桜の木に火が燃え移りました
夫には見えなかった様ですが、私は確かに見たのです
いつかの日の犬が私に深々と頭を下げて消えたのです
やっとの事消防車が来ましたが桜の木のほとんどが燃えてしまいました
もしかしたら幻か、見間違いだったのかもしれません
でも私はあの犬がいると思っています



はぁ、それで話というのは………?



あらいけない、すっかり忘れていたわ
それで今度、貴女達一戸建ての家を買うでしょう?
良かったら庭に桜の木を植えてみない?



エエ良いですよ
もしかしたら彭侯かもしれませんね



ホウコウ?


木の精ですよ
何でも犬なのに尻尾がないそうですよ



へぇ、そうなの
でも彼にはもう会えないでしょうね………
そんな気がするわ






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