意味のない行動

暗い部屋。
腐った匂い。水の音。僕と彼女の息づかい。

空っぽの部屋の中で、僕らは身を寄せあうようにして、そこにいた。

頭は朦朧として、視界はゆがむ。指は、なにを掴めばいいのかわからないように大げさに震えていた。

肩によりかかる彼女の体温から、彼女がまだ生きているということを感じ取ることができた。

彼女は、呼吸もままならないのか、浅く早い息を繰り返し続けていた。

「ね、ごはん、たべよ…?」

彼女は弱々しく首を横に振った。

「まだ、きれいに、なれてない」

彼女が振られてから一週間。その間、彼女は何も食べていないのだ。

痩せたら、きれいになれると思い込んでいる。

痩せれば、信じていた人がまた自分に振り向いてくれると、思い込んでいる。

彼が、もう一度、愛してくれると思い込んでいる。

そんな彼女が哀れだった。

暗い部屋で、食べずに生きていても何もないのに。

彼は、ただ、彼女に飽きただけなのに。

「愛され、たい、な」

弱々しい彼女の声。

「じゃあ、僕が、愛すよ」

心からの言葉を彼女の耳に吹き込んだ。

「君にあいされるほど、自分に、存在価値があるのか、わからない、よ…」

「そんなもの、僕が教えるから、さぁ」

だから、彼女はそんな風にならなくってもいいんだ。

わるいのは、僕と、彼女に飽きた彼なんだから。

「…死にたいよ」

ぽつりと彼女がつぶやいた言葉は、きっと彼女のすべてを否定する行為だった。

「…死んだら、いいよ。ぼくは、止めない」

ぼくが、彼女に与えられるものは、もう言葉くらいで。

もう、彼女を止めようなどとは思えなかった。

…彼女が最後に網膜に焼き付けるのが、僕なら、それはそれでいいかもしれない。

きっと、それなら来世でも地獄でも天国でも、彼女は僕の側にいてくれると思うんだ。

それはそれで、幸せだろう…?

止める権利、与える権利を盾にしているなんて、僕は考えない。

ただ、ずっと一緒に、いられたらだなんて、思うんだ。






END











あとがき


もぬいぬいさんと交換する約束をした文でした!
なんか束縛や出されたお題と多少違う気もしますがご勘弁ください\(^o^)/






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