おわりの、はじまり

ーーすきな人がいました。
水色の髪をふわふわと広げて笑う様は、天使のようで。笑顔が世界一綺麗な女の子でした。
歌がうまくて、動物に優しくて、そして僕のことを好いてくれました。
僕が描いていた、普通の世界にちょっとした幸福をもたらしてくれました。



彼女は殺されました。誰に? 奴らにです。


存在は知っていました。金を積まれれば、自分の欲望のために何でもやる殺し屋集団。
最低な気分でした。頭が狂いそうでした。彼女はなにもしてない。静かに暮らしていただけなのに、だれがそんな奴らに彼女を殺せと言ったのでしょうか。

死体すらなく、おびただしい量の血液と、体を引きずった痕、彼女の皮膚の断片と、美しかった水色の髪がプカプカと汚れた赤黒い液体の中に浮かんでいました。

街の人は言いました「生きているわけないだろう、諦めなさい」
わかっていました。でも僕は、彼女のことが忘れられませんでした。
昨日婚約したばかりでした。幸せな夜を迎えて、何故次の日に、こんなことが起こるのでしょう。

僕の「普通」は一日でもろくも崩れ去りました。
僕は三日三晩、なにも食べずに泣き続けました。彼女が死んだのは異常。だから、異常なことをせねば忘れられないと思ったからです。

でも、忘れられませんでした。

真っ白になった僕の髪を、僕は彼女と同じ、水色に染めました。
恨みがこもった真っ黒なクマは、もう二度と取れることがないように思えました。

僕は決めました。彼らを殺してやることを。

僕は決めました。僕の愛した「普通」を奪ったものを消し去ろうと。
だって、普通は……消し去らなければならないのですから。




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テーマ「人外ファンタジー」
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