おわらないいし

心が、痛んだ。

わたしには痛む心などないと思っていたのに。

目の前の彼女の姿を見たらいとも簡単に心がズタズタに切り裂かれた。

「ああ、そうか。わたしは自分とかさねているのか」

もしかしたら、私は自分が彼女になった可能性を考えたのかもしれなかった。

哀れだった。こんなことは、許されていけないというくらい、哀れ。

目の前でギイギイと嫌な音をたててロープが揺れた。

多分、痛みを感じない方法を選んだのだろう、だけどあとに残されたものにとっては汚い死に方だった。

彼女がこうなって何日経過したのだろうか。冬だからマシだったのかもしれない。

すでに、あたりには生臭さが漂いはじめていた。

わたしは彼女を見つめてみた。
だけど、彼女はピクリとも首を動かさず、代わりにきいきいと、ロープの音が鳴いた。

「ははは…ねぇ、何してるんだろうね、わたし」

自分がしていることの愚かしさに吐きそうだった。

私なら止めれたはずだ。
なぜ、とめなかった。
なぜ、見過ごした。

「だからさ、あの人は、やめとけっていったのに…」

彼女の青白い肌を指でなぞった。
手首には大量の傷と血が滲んでいて、人差し指は気持ち悪いくらいひん曲がっていた。

わたしの頭より頭上にある顔はよく見えない。

下に転がっていたイスを起こして不安定なその上に立った。

彼女と同じ目線になれた。

彼女の顔をハンカチでぬぐうと、青黒く歪んだ顔が見えた。

彼女の、顔をなでた。

「大好き、だよ」

抱きしめると壊れてしまいそうだった。

彼女の首にかかっていたロープをとると、彼女をしたに落とした。

わたしは、彼女がかかっていたロープを掴むと

笑いながら、そのわにくびをかけた。


END






終わらない、意思
終わらない、縊死
終わる、意識




アトガキ
首をつるおはなしを書きたかったんです。
好きとかじゃなく、ただかいてみたかった。

本当は"彼女"を生きていた設定にしようと思いましたが、縊死ってかなり生き残る確率が低いってこともかきたかったので、そちらを優先しました。







ここまで読んでくださり、ありがとうございました!







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