初めての出会い
「なぁ、コウ」
俺の呼びかけに反応したコウは、雑誌に向いていた視線を俺の方に移動させ、コーヒーをすすった。
「なぁ、セイちゃんってさ、エッチしたことあると思う?」
コウは一瞬動きを止めたあと、口の中にあった琥珀色の液体で綺麗な放物線を生み出した。
しかもこれが水なら虹が浮かびそうなくらい綺麗な放物線を。
「おまっ、何言って……!」
「え、なんか気になんない?美奈子ちゃんと付き合ってるのに、セイちゃんってそういう雰囲気一切醸し出さないじゃん。だからさ、知りたいなって」
「知りたいな、って言われても……。つか、オマエ、またなんか企んでんだろ?」
さすがコウ。
俺の思考回路を一番分かってる男だ。
俺の企みに興味があるのか、ティッシュで机を綺麗に拭いたあと、雑誌を閉じて身を乗り出してきた。
「まぁね。でもさ、エッチ自体はしたことないにしても、どんくらいの知識があるのかとか気になんない?俺は超気になる。仮にだよ、多少は知識あったとして、俺セイちゃんがちゃんと避妊出来てるか心配で心配で。それか、ああ見えてもしかしたら好みのエッチは野獣系かもしれないよね?も、もしもだよ?若いからって勢いにまかせて欲望に溺れきってしまおうとしてたら……?」
少しだけ焦ってる様子を醸し出し、心から二人のことを思いやっている、だからこそ知りたいんだ、という心配と不安がいりまじった複雑な表情を浮かべ、コウの返事を待つ。
何を企んでんだ?と、コウの興味を引いたところで、矢継ぎ早に二人への思いやりを見せコウの情を揺さぶる。
よし、ここまでのプレゼンは完璧だ。
この後、ちょっとだけ考える間を与えて悩んでるところに、最後の一押しで再び情に訴えればコウは落ちるはずだ。
俺だって全然心配してないわけじゃない。
だけど、セイちゃんはこの手のことにすげぇ疎いし、美奈子ちゃんのこと大事にしてるみたいだから、卒業するまでは……とか言っちゃって、チューすらしてないんじゃないかと思う。
100%想像だけど。
だからこそ知りたい。
セイちゃんがコンドームの使い方を知ってるのかを。
それを知ることも出来て、セイちゃんの面白リアクションも見られるなら、1000円の出費は全然痛くない。
そのイタズラ……いや、ミッションを成功させるためには、コウがいないとダメなんだ。
俺一人ならセイちゃんは絶対に騙されてくれない。
だけどコウがいれば、セイちゃんはまだちゃんと騙されてくれる。
だから――。
「……二人とも俺らにとって大事な幼なじみだろ?見守るだけじゃなく、ちゃんとアドバイスするのもヒーローの役目なんじゃないかなって俺は思う。だから、手伝って?」
「オマエって、ホント悪趣味なこと考えんの上手いよな」
「まあ、悪趣味って失礼な!……って、面白がってんの気づいちゃった?でも二人とも大事な幼馴染ってのはホントだよ?」
「ンなこと分かってっから首かしげんじゃねぇ。気色悪ぃ……で、手伝うって何をだ」
コウは、とフッと笑みをこぼし、顎でその先を促した。
よし、コウがその気になってくれたらもうこっちのモンだ。
思わず握手を求めてしまってコウにまた気色悪ぃな、と言われながら、ミッションを成功させるための作戦を伝えた。
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