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君は生涯ヒトであり続けたことを後悔しなくていい




 ヒトとアクマでは流れる時間が違う。私達にとって一瞬と思える時間をヒトは一生と呼ぶ。その流れは変わらない。

「だから分かっていた、いつかこういう時が来ると」
「レムさん……」

 ベッドに横たわるその姿は出会ったときから随分と変わった。私は何一つ変わらない姿でここにいると言うのに……

「アクマとして生きることを選んでいたらもっと別の最期を迎えていたんでしょうか……」

 リツカが遠くを見つめる。多分、彼女はあの日の選択の事を思い出しているのだろう。

「君の選択は間違ってはいない。君は大切な家族と大切な場所を選び、私もまたそんな君を遠くから愛し続けることを選んだ、それだけのことだ。だから君は生涯ヒトであり続けたことを後悔しなくていい。私は大切なものを愛の為の犠牲にしたりせず大切にし続けた君を愛せたことを誇りに思っている」

 この言葉に嘘偽りはない。そんな君だから私は愛したのだ。

「ヒトにとっては永久の別れでもアクマにとっては君が生まれ変わる時までの短い別れだ。また次も君を探そう。例え君が私を覚えていなくとも」

 そう、ほんの一瞬の別れだ。次は君のその身に身に余るほどの力を宿さず、穏やかに生きられることを密かに願っている……。




お題:お題bot(@odai_bot00)から




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