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綺麗なままにと願う愚かさを
薔薇の花が敷き詰められた棺に横たわるその死体はまるで眠っているようで、また目を覚ましそうな気すらした。しかし彼女の血はグリモワールとして全てネスタ様が飲み干し、一滴もその体には残っていない。
「美しいわね、血が抜けきった肌は白く透き通るようだわ」
その頬に触れればもう温かさは少しも残っておらずまるで彼女が我々と同じヴァンパイアにでもなったようだ。
「アンタの死体をちゃんと拾ってこうして弔っているワタシに感謝しなさいよ?」
死に化粧を施し、出来るだけきれいな姿でこの棺に納めた。何の為にこんなことをしたのかは自分にもよく分からなかった。
「このままアンタを死んだ時のまま保てたらアンタはワタシとは別の永遠の美を手に入れたことになるのかしらね?」
衰えることのない永遠の美しさを求めヴァンパイアになったワタシと美しい瞬間を閉じ込めたリツカと……。しかし現実はそうはいかない。この美しさは生きている人間以上に一瞬で崩れていく……つまりこの姿を保っていられるのはほんの刹那の時間だけ。
「アンタが綺麗なままにと願うのは愚かなことかしら」
出来ることならアンタの血を吸ってみたかったわ、なんてネスタ様に知られたらただでは済まないだろうけど。
「その美しさはワタシの中で永遠にしてあげるわ」
リツカの棺に蓋をする。美しいものが崩れて跡形もなくなる姿など見たくはない。
「さようなら可哀想なリツカ」
さようなら、悲しくも美しい、闇の花嫁
お題:お題bot(@odai_bot00)様から
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