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手に入れたかったのか、壊したかったのか。そもそも『手に入れたいモノ』は何だったか。




 瞳に暗闇だけを浮かべるリツカを眺めながらその周りを取り囲む屍の山にも目をやる。これはリツカの大切なものだったはずなのにどうしてリツカは何も反応してくれないのか……。

「もう完全に壊れちゃったの?オレと同じところに堕ちて来てくれると思ったのに」

 額をつん、とつついてみてもなんの反応もない。ただ人形のようにされるがまま頭が揺れるだけ。
 あれ、オレって何がしたかったんだっけ?ふと浮かんだ疑問に首をかしげる。確かにリツカを壊してその瞳が絶望に染まるのが見たかった。でもそしたらその先は?結局のところオレはリツカを手に入れたかったのか、壊したかったのか……いやそもそも本当に手に入れたかったモノって何だったんだっけ?

「そんなことリツカに聞いても分からないか」

 何を言ってもリツカの表情が変わることはない。いっそこの街を消し去ってしまえばまたリツカはその瞳に絶望を浮かべてくれるのだろうか。

「そもそもキミの大事なモノってなんなんだろうね」

 出口のない迷宮に迷い込んでしまったのはオレかリツカか……。まあ、そんなことどうでもいいか。オレはしたいようにするだけだから。

「だからまた絶望してみせてよ、リツカ」




お題:『一人遊び。』お題bot(@hitoriasobi_bot)から




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