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「退きなさいと言っているでしょうこの穀潰しが!!」
掃除機を片手に床で寝るシュウを睨み付けながらレイジはため息をつく。なぜこんなやつが長男なのかと……上がこうでは示しがつかない。長男がこんな様子だから弟たちもあんな状況なのでは無いかとさえ思う。
「煩いな……掃除なんてあとからすれば良いだろ……オレは眠い」
そんなレイジのことなどお構い無しにシュウは目も開けずそう答え、もう一度眠ろうとする。
「貴方のように私は暇でありませんからね、やれるときにやらなければいけないのです」
「そう、オレには関係ない……」
「穀潰しが!!」
いくら言っても動く様子の無いシュウに苛立ちが募る。掃除機をかけるだけなのにどうしてこんなに苛立たなければいけないのか……。
「邪魔なごみですね」
「……いひゃい……」
レイジは掃除機のスイッチを入れシュウの顔へ向ける。それでも無抵抗で少し不満そうな表情を浮かべながらも動こうとしないシュウにレイジは完全にキレた。動かないのなら面倒だが自分で移動させればいいのだ。そして掃除機のヘッドでシュウを押して無理矢理移動させることにした。
「痛いんだけど」
「文句を言うのなら自分で移動したらどうですか」
「めんどくさい。レイジもそんなことしてないで休めばいいのに」
そういってやっと起き上がったかと思うとレイジの手を引きそのまま倒れこむ。レイジがシュウの上に乗る形になり、レイジが起き上がろうとするもそれは腰に回されたシュウの手によって阻止されてしまった。
「なんのつもりですかこれは」
「いいだろ。たまには休むのも必要だって……」
「いつも休んでいるあなたに言われたくはありません、離しなさい!」
「たまにはこうするのも悪くないだろ?」
そういってシュウ唇がレイジの唇を覆う。レイジは突然のことに目を見開き抵抗することも出来ずにただ唖然としていた。
「な、にを……!?」
「何をってキスだけど?好きなんだろ、オレのこと。その証拠に顔真っ赤だけど……?」
「……っ!!」
「ばれてないとでも思ってたわけ?」
「黙りなさい!!」
にやにやするシュウを睨み、なんとか腕の中からのかれようともがくがこんな穀潰しでも兄は兄、力で叶うはずもなくレイジは無駄な抵抗と悟り力を抜き体をシュウに預ける。
「今日だけです、こんな風にだらけるのは
「好きなのは否定しないんだな」
「好きではありませんよ。もっと複雑な感情です。私は貴方ほど簡単にできてはいませんからね」
憎悪や嫉妬、どす黒い感情が渦巻く中に確かに愛情というものもあるかもしれない。それでもそれは好きの一言で表せるような感情では無かった。
「まあどうでもいいけど……お休み」
「寝るなら離しなさい、私はまだ掃除の続きが!!」
「今日だけなんだろ……?」
「シュウ!!」
そのまま眠りに落ちていく兄を見ながらため息をつく。どうして自分はこんな兄に敵わないのか……シュウといると自分は完璧であるはずなのに劣等感を感じてしまう。それがたまらなく悔しいうえにその相手がシュウであることが腹立たしい。
「いつか、必ず」
そうシュウの顔を見ながら呟く。必ず、その後に続く言葉は自分でもわからなかった。
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