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「ん……」

 ふと目を覚ますと目の前には山積みになった本と自分で書いたメモ。どうやら昨日研究資料を読んでいる最中に眠ってしまったらしい。時間を確認する為に時計を確認すると時計の針はまだ昼前を差していた。私がこんな時間に目覚めるとは珍しい……。もう一度寝ようかとも思ったがやけに目が冴えて眠れない。

「仕方ありませんね……何か掃除でもしますか」

 とりあえず部屋を出てリビングへと向かう。なんだか今日は窓から差し込む日光がやけに心地いい。

「どういう心境の変化なのでしょうか……」

 そんなことを思いながらリビングに入るとそこには既に先客がいた。誰なのかは顔を確認しなくても分かる。

「こんな時間にどうしてここにいるのですか。部屋に戻って眠ったらどう……で、す……?」

 嫌みを言ってやろうとその影に近寄って違和感を感じる。栗色の柔らかな髪から白い三角の……猫耳……?が生えている。投げ出した足の横には白い尻尾まで見えている。まさかこの私が寝惚けているのでしょうか……?そう思い何度か瞬きをし、そして確かめるようにその尻尾に触れる。

「これは……本物……?」

 作り物の手触りでは無かった。ほのかに温かさも感じる。引っ張ってみるとソファーに寝そべっていた影が不満を漏らした。

「痛いんだけど。っていうか何の用なわけ?こんな時間に」
「黙りなさいこの穀潰しが!」
「何怒ってんの?」
「これはなんの真似ですか」
「それはこっちの台詞だけど」

 影が、シュウが徐に手を伸ばしそして何かを掴む。その瞬間体に走る電流のようなもの。違和感の正体を確かめるためにシュウの手が掴むものを確認する。
 シュウの手に握られていたのは私もさっき触っていたのと同じような白い尻尾。その尻尾が繋がる先は自分の体……。なぜか自分にも尻尾が生えている。恐る恐る手を頭にやるとぴんと張ったふわふわとした物体も生えていた。

「これはどういうことですかシュウ。説明なさい」
「説明もなにもオレは知らない。目が覚めたら生えてた。それでここに移動してきたらやけに温かくて気持ちよかったから昼寝してた。それだけ」

 あくびをしてから大きく伸びをしてシュウが立ち上がる。そのままふらふらとどこに行くのかと思えば窓際まで行ってそこに寝転ぶ。

「そんなところに寝ないでください邪魔です。それともごみと一緒に掃除して差し上げましょうか?」

 皮肉を込めて言うとシュウがふっと笑い、そして起き上がって私の腕を掴む。

「いいからお前も来いよ」
「何を……っ!!」

 そのままシュウに引っ張られバランスを崩し床へと倒れ込む。文句と共に嫌みをいってやろうとしたところでシュウに後ろから抱き締められる。

「離しなさい穀潰し!こんなところで眠るなど!それも私まで巻き込んで!」
「いいだろ別に。それになんだか今日はやけに温かくて気持ちいい……」

 腕から逃れようとしているうちに日だまりの温かさが心地よくて眠気が襲ってくる。こんなところで眠るなど……穀潰しでもあるまいし。

「今日くらい猫みたいに自堕落に過ごせばいいだろ。折角耳と尻尾も生えたんだし」
「いつも自堕落に過ごしているくせに何を」
「なんとでも言え……オレはこのまま眠る」

 文句を言う私など気にもしていない様子でシュウの頭が私の首筋に埋められる。柔らかい髪の感触と耳のふわふわとした感触がくすぐったい。でもそれも心地よかった。今日の私はどうかしていますね……。

 「今日だけです。それもこれもこんなおかしなものが生えたせいです」

 誰も聞いていないのに言い訳めいたそんなことを呟いて私も静かに目を閉じた。








猫耳が生えた日
(たまにはこんなのも悪くない)




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