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――なんでこんなことになっているのか……
いつものように学校から帰宅して、いつものように自室の棺桶の中で眠ろうとしていたのに……それなのに何故オレは今よりにもよってライトに押し倒されているのか……
これも全てコイツのくだらないお願いを聞いてしまったせいなのだと考えると腹が立つ。
事の発端は数分前、ライトがオレの部屋を訪れたことから始まった――……
気怠い学校も終わり、さっさと寝ようと棺桶の中で目を閉じる。意識が虚ろい初めた頃不意に誰かが棺桶を叩いた
「スーバールーくん、ねえ起きてるんでしょ?そんな棺桶なんかに引きこもってないで出てきなよー?お兄ちゃんとイイコトしようよ、ねえねえスバルくん出ておいでー」
耳障りな甘ったるい声と棺桶を叩く音、眠りに落ちる寸前だったということもあり段々と苛ついてくる。
「だーっもううっせーな何だよ万年発情期」
「んふ、やっと出て来たね。もうスバルくんがずっと無視するからお兄ちゃん傷ついちゃったよ」
「だから何の用だって聞いてんだよ変態が。夜這い仕掛けるならオレじゃねぇだろ。お前には花嫁が居るんだからそっち行け」
「なあにスバルくん、ボクが夜這いに来たと思ってるの?んふ、スバルくんがお望みならシてあげても良いんだけど」
「んなわけあるか。用事がねえならオレは寝る、だから出てけ変態」
「んふ、罵られるのも悪くないよっねえもっと罵ってよっ!!もっと氷のように突き刺さる目線を僕に向けてっそれでもっと僕に罵声を浴びせてよ!!」
SとMを兼ね備えてるやつほどめんどくさいやつはいないと心底思う。オレはついていけないしついていく気も無い。
面倒になり、もうこんなやつ無視して眠ってしまおうと棺桶の蓋に手をかける。
「そこで一生やってろ」
「ああちょっと待ってよ、今日は別に罵られる為に来たんじゃ無いんだ。ちょっとしたお願いがあってね。ねえスバルくん、ボクの血を吸ってよ」
「…………は?」
「だぁかぁらボクの血を吸って欲しいの。ビッチちゃんに吸血されたときにすっごく気持ちが良くてね、クセになっちゃったんだ。でもビッチちゃんはまだ吸血に抵抗があるみたいであんまり血を吸ってくれないんだ……だから代わりにスバルくんに血を吸って欲しいなって思ってね?」
「付き合いきれねぇ、寝る」
呆れて蓋を閉じようとしたがライトに阻止されそれは叶わなかった。
コイツが花嫁を手に入れる前なら力比べで勝つことが出来たのだが、花嫁を手に入れた今では勝ち目が無い。諦めて蓋から手を離す
「んふふ、物分かりがいい子で良かったよ。それじゃあ吸ってくれるんだね?」
「誰も吸うなんて言ってないだろ。それにオレじゃなくアヤトあたりに頼めよ、オレは嫌だ」
「えーアヤトくんは嫌だよー。同じ腹から産まれた兄弟だよ?嫌に決まってるじゃないか?勿論カナトくんもね」
「じゃあシュウかレイジに頼めば良いだろ」
「あの2人がシてくれると思ってるの?」
「まあしないだろうな」
「でしょ?だから消去法でスバルくんってわけ。それに今のボクにはビッチちゃんの血が流れてるんだから間接的にとは言えビッチちゃんの血が飲めるんだよ?スバルくんにとっても悪い話じゃ無いと思うんだけどなー」
「だったら回りくどいことしないで直接吸血すればいいだけの話だ。なんでテメェを経由して飲まなきゃいねぇんだよ」
「とか言いながら、本当は渇いてるんじゃないの?」
「……っ」
「ね、そうでしょ?んふ、ほら好きなだけ飲みなよ」
ライトがシャツのボタンを開け首筋が見えるようにし、ポケットから取り出したナイフを首筋に滑らせる。血の匂いが充満し、渇いた喉が血を求めてゴクリと鳴った。最悪だ、こんなやつの血を飲みたいと一瞬でも思うなんて
「くっそ……もうどうにでもなれっ」
ライトの首筋に舌を這わせる。久しぶりの食事に体中が満たされていく、例えそれが兄の血であったとしても。
「……は……くっそ……足りねえ……」
「ほら牙を突き立てなよ、遠慮はいらないよ、さあっ!!」
「……っ」
牙を突き立て血を吸うと渇いた体が潤っていくのが分かった。完全ライトのペースに巻き込まれているとは分かっていても体は正直だ
「あぁ……イイ……イイよっ……もうイっちゃいそうだよ……」
「ん……くっ……頼むから黙ってろ、その気色悪い声聞いてると悪寒がする」
「んふ、スバルくんは吸血されたことが無いからそう言えるんだよ。ほら、もっと飲んで良いんだよ?」
体が求めるままにライトの血を貪る。ユイの血が混じるその血は飲めば飲むほど力が漲り、もっともっと欲しくなる。
ライトの気色悪い喘ぎ声さえ無ければ、相手がライトでなければ文句など無かったのだが…
「んふ……なんだ、かんだ言って……んっ……スバルくんもその気になってきてるんじゃないか……んふふもっと……ボクに溺れちゃえばいいのに……っ」
そこで我に帰った。オレは何をしてるんだ……男から、それもこんな変態から吸血して、ハマってしまいそうになるなんて……。
「どうしたのスバルくん?もっともっと吸っても良いんだよ?ボクを召し上がれ」
「……言い方が一々気色わりぃんだよっ!!それにもう萎えた」
「えーまだまだボクは足りないよー?」
「甘ったるいんだよテメェの血、やけに喉に絡み付くし」
溶かしたチョコレートをそのまま飲んでるようなそんな気分で軽く胸焼けがする。血の味にまで性格が出るもんなんだと感心するくらいにはライトをそのまま表したような味だった
「これで満足したろ、もう帰れ変態」
「んふ、帰る前にお願い事を聞いてもらったんだからお礼しないと……ねっ!」
いきなり肩を掴まれたかと思うと、そのまま棺桶の中に押し倒される。元々そんなに広くないのにオレの上にライトが居る状態だと尚更狭く、身動きが出来ない
「何すんだ変態っ本気でオレに夜這い仕掛けるつもりかっ」
「違うよ、お礼に吸血される快感をスバルくんにも教えてあげようと思って」
そう笑うライトの目は本気だった。
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