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 キィと小さく音をたてて棺が開く。その音で目を覚ましたオレは首を動かさず目だけで開けたそいつの顔を見る。この時間に来るやつなんて一人しか居ない。

「あ、起こしちゃった?ごめんねースバルくん」
「ライト……何しに来やがった」
「んふ…何しにってナニしに来たに決まってるじゃないか。スバルくんったらそれ分かってて聞くんだね。それじゃ失礼してっと」

 ライトが狭い棺の中に無理矢理入ってくる。狭いし鬱陶しいし、何より眠っていたところを起こされたことに一番腹が立つ。

「出ていけ、男二人で入れる広さじゃないしオレはもう寝るんだ」
「やだなー愛するお兄ちゃんをそうやって追い出すつもりなの?もうスバルくんったら冷たいなー」
「うるせぇ変態」

 ライトに背を向けてもう一度眠ろうと目を閉じる。こいつには付き合うだけ無駄だし、オレが苛立つだけでなんのメリットも無い。

「口では出てけなんて言うけど全然追い出そうとしないんだね。んふ、何だかんだ言ってもやっぱりスバルくんはボクのこと好きなんだね」
「勝手に言ってろ。あとそれ以上喋るなら無理矢理にでも追い出すからな」
「はいはい分かりましたよーっと」

 ライトはそれ以上確かに何も言わなかったがオレの腰に腕を回し、後ろから抱き締めてきた。確かに触るなとは言わなかったが……。

「なんで抱き付いてくるんだよ気色わりぃ」
「今日はねー人肌を感じて眠りたい気分なんだよねー」
「バンパイアに体温はねぇんだから人肌感じて眠りたいなら他当たれ」
「そういうところつっこんじゃダメだよ?もっとムード大切にしないと女の子に嫌われちゃうよ?」
「別に好かれようなんて思ってねぇよ」
「そうだよね、スバルくんにはボクがいるもんね」

 ライトがくすくす笑う。全てを見透かしたような態度に腹が立つ。

「言ってろ変態」
「だって事実じゃないか。ねえスバルくんたまにはスバルくんから好きとか愛してるって言ってよ?いつもボクしか言ってないじゃない」
「断る。いいから寝ろ」
「えー言ってくれたっていいじゃないか。ボクのこと愛してないの?」
「うぜぇアニキとしか思ってねぇよ」

 そろそろ本気で追い出した方がいい気がする。いい加減眠りたいし、今はコイツの相手をする気分じゃない。

「ねえスバルくん、別にボクは今からスバルくんのこと愛してるって言うまで犯してぐちゃぐちゃにして恥辱の限りを尽くしても良いんだよ?寧ろボクはその方が楽しいしねぇ?んふ……楽しみだよスバルくんが泣きながらボクへの愛を叫んでくれるのが」

んふと笑い腰に回された手が下に伸ばされる。そんなの冗談じゃない!

「やめろ。愛してるって言えばそれでいいんだろ?今日はそういう気分じゃねぇんだよ寝せろ」
「ようやく言ってくれる気になった?お兄ちゃん嬉しいよ」
「はいはい」

 寝返りをうってライトと向き合う形にる。にやけた顔が気に入らないが背に腹は代えられない。

「愛してる」
「んふ、良くできました」

 腰に回された手に力が込められ更に抱き寄せられる、暑苦しい……体温が無いのに暑苦しいはおかしいのかもしれないが。

「めんどくせぇやつ」
「そんなめんどくさいやつに惚れたのはスバルくんだよ?」
「惚れてねえよ死ね」
「そうやって罵倒したらボクがもっと喜ぶの分かってるくせにー」
「うるせぇ変態」
「誉め言葉さ」
「兎に角もう寝る、追い出されたくなかったらさっさと寝ろ。もうこれ以上会話する気はねぇからな」
「分かったよスバルくん、お休み」

 額にライトの口付けが落とされ、そしてようやくライトも寝る気になったのか目を閉じた。

「なんでコイツなんだろうな」

 そんな答えの出ない問答を自分に問いかけながらオレも目を閉じ、微睡みの中へと落ちていった。




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