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「なあ、もうやめにしねえか、これ」
ほぼ裸でベッドに寝そべるライトを横目にそう呟くとライトは気だるそうに起き上がりオレの方を向いて首を傾げた。
「え、どうして?」
「飽きた。それにお前とヤるのと女とヤるのじゃ全く違うっつーの」
「えーボクは結構楽しかったんだけどなー」
この関係を最初に持ち掛けてきたのはライトだった。いいエサが見つからずにイライラしていたところでライトがそれならボクを代わりにしなよと言い出し半ば無理矢理ベッドに引きずり込まれ、そのときどうかしていたオレはそのままライトと致したというわけだ。それからもお互いの欲を発散する為だけに肌を重ね、何度かこうしていた。
「だいたい冷静に考えてなんでオレ様がお前とヤらなきゃいけないんだよ」
「でも気持ちよかったでしょ?んふ、それならいいじゃない、このままで」
「はぁ?やっぱり抱くなら巨乳の女に限る」
「女の子は胸じゃないと思うんだけどなー」
「兎に角もうこの関係は終わりだ。さっさと服着て出ていきやがれ」
「もー仕方ないなー。って出ていけってここボクの部屋だよ?」
ライトがベッドの横に落ちている自分の服を拾い上げてシャツを羽織りボタンを留めながら残念だな、ボクは結構楽しかったのにと不満げに漏らしていた
「あ、そうだアヤトくん、ボクピアスの穴開けようと思ってるんだよね」
「それがどうしたんだよ、勝手に開ければいいだろ?」
「んふ、アヤトくんに開けて欲しいなって」
「はぁ?」
「だぁかぁらぁ、アヤトくんのその牙でボクの耳に穴を開けて欲しいの。記念にさ」
「意味わかんねぇ」
「いいから、お願い。んふ、それともぉこのことレイジやシュウに言いふらしてもいいのかな?ボクとしては別に構わないけど」
「チッ分かったよ、どこに開ければいいんだよ」
しぶしぶそう言うとライトが髪を耳にかけながら自分の耳朶を触りながらぶつぶつとここ、いやこっち……と呟いていた。
「決めた、ここの左耳の軟骨のところ」
「そこな。ほら開けてやるからもっとこっちに来い」
「ほんとに開けてくれるんだーんふ、ありがと」
「渋々な」
ライトの耳元へと顔を寄せる。ちらりとライトの横顔を見ると頬を赤らめながらにやにやしていた。相変わらず気持ち悪いヤツだ……。
「ほら、いくぞ」
「んふ、どうぞ」
ライトがさっき指差したところに思いっきり牙を突き立てる。軟骨に一瞬引っ掛かったが、力任せに突き刺した。
「痛……っアヤ、トくん……痛いよっ」
「人間じゃあるまいしお前に手加減する必要無いだろ」
「そう、だけどさ」
「血が溢れてきて勿体無いな」
2つの穴溢れ出る血を舌で舐めりとり、吸い上げる。人間には劣るがライトの血の味は嫌いではなかった。
「ん……っ、はぁ……いいよアヤトくん、もっと、もっと吸ってよ……ぁっ……痛みと快楽をもっとボクに頂戴よ……」
「痛みでも感じるとかどんだけだよお前」
「んふ、分かってないなアヤトくんは。さて、どんな感じなのかなー」
ライトが自分の耳の縁をなぞるようにして確かめる。そして不思議そうな顔をして何度か耳に空いた穴を触ってからあー!と叫んだ。
「んだよ騒がしいな」
「ちょっと!ボク1つだけ穴を開けて欲しかったのに2つも穴空いてるじゃない!」
「そりゃそうだろ、オレたちの牙は2本あるんだから」
「1つだけ刺せばいいことでしょ?ああもう……別にいいけどさ……」
「で、これで満足かよ?」
「不満はあるけどとりあえずはそうだね……」
欠伸をしながらライトのベッドに倒れ込む。なんだか眠くなってきた。窓の外を見るともう朝日が昇り始めている。
「じゃあオレ様は寝る」
「あ、ちょっと待ってよ」
「まだ何かあんのかよ」
「アヤトくんは開けなくていいの?ピアスの穴」
「は?」
ライトがオレの耳に触れながら小首を傾げる。こいつがやったところでその仕草に感じるものは無いしむしろ気色悪い。
「折角だからお礼も込めてアヤトくんにも開けてあげようと思って。ボクが開ければ病院に行ったりピアッサーを買ってくる必要無いでしょ?それに前に言ってたよね、ピアスの穴開けたいって」
「言ったけどお前の牙で開けられるのはごめんだ」
「そんなこと言わないでよ、ねえ開けるならどこがいい?ボクとお揃いにする?ねえねえ」
「お前とお揃いだけは絶対に嫌だっての」
「そっか、じゃあ右の耳朶なんてどう?それなら左右も位置も別のところだからボクとお揃いにならないし」
ライトがオレの耳朶にキスをして「ねえいいでしょ?」と囁く。確かにピアスの穴を開けようとは思っていたが……。
「仕方ねぇな。右の耳朶に1つだけだからな」
「んふ、ありがと、それじゃあ噛むよ……っ」
一瞬チクリと耳朶に痛みが走る。しかしライトと違い軟骨あるは場所では無いためかそんなに痛みはなかった。耳朶に刺さったものが引き抜かれる感覚の後にざらついた舌の感触があった。
「なんで舐めてんだよ」
「だって勿体ないでしょ?それにアヤトくんだってボクの耳から血吸ったじゃない?……ところで耳朶って美味しそうだよね柔らかくてさ」
「気持ち悪いこと言うな」
「はい、終わり。あんまり痛くなかったでしょ?ボクは優しいからねーちゃんと加減したんだからね、誰かさんと違って」
「うるせぇ。今度こそ終わっただろ、オレ様は寝る」
「ボクのベッドなのにー。んふ、じゃあ隣で眠ろうかな、これも今日で最後なんでしょ?」
「当たり前だろ」
「でもほんとに残念、ボクはアヤトくんのこと嫌いじゃなかったんだけどなー。まあまたいつでも言ってよ、ボクはいつでも相手してあげるから」
「もうやめるって言ってんだろ」
ライトに背を向けて目を瞑る。ライトがどう思っていようがオレにとっては一時の気紛れでしかない。だからこの遊びはもう二度としない、玩具に飽きたらそれを捨てるだけのことだ。
「それじゃあおやすみ、アヤトくん」
その言葉にオレはなにも返さずに眠りについた。
ふと目が覚めて、ボクは隣で眠るアヤトくんの寝顔を見ながら微笑む。
「んふ、アヤトくんってば簡単に乗っちゃうんだから。まあそこがアヤトくんの可愛いところなのかもしれないけどね」
ボクは左耳に空いた穴に触れる。アヤトくんがつけてくれた2つの印。
「ピアスの位置には意味があってね、左は守る人、右は守られる人って意味なんだ、それが転じて男が右だけにピアスしてるとね……んふ」
多分アヤトくんはその意味を微塵も知らないだろうしボクも教えない。でもボクはアヤトくんがピアスをしているのを見るたびにそれを思い出してアヤトくんと絡み合った日々を思い出す。
「ゲイの証なんだよ、アヤトくん。アヤトくんが女の子と愛し合おうとボクとのこの行為は無かったことにならないし、させないよ?」
ボクはアヤトくんのこと好きなんだからね、とアヤトくんの耳元で囁きそしてもう一度眠りについた。
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