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「ライトを怒らせたい?」
「あぁ、あの変態何言っても悦ぶからな……レイジならなんか知ってるんじゃないかと思ってな」
「怒らせてどうするんですか。そこから喧嘩に発展してまた家具や壁を壊すようなことになったらどうするんですか?貴方は壊したらそのまま、修理や新しい家具の手配をするのは私なんですよ?」
「壊さねぇよ!!で、なんか知ってるのか?」
「そうですね……あのライトが何か言われたくらいで怒るようなことなど無い気もするのですが……」

 レイジはそうですね……と言って考え込んでしまった。それを見てオレは溜め息をつく。いつもいつもライトに翻弄されてばかりで、何を言っても動じないライトに何かダメージを与えられないか考えたが全くいい考えが浮かばず、レイジに聞いても何も分かりそうにない……流石、と言うべきなのか呆れるべきなのか……。

「やっぱり無いよな……わりぃ、忘れてくれ」
「いえ、ひとつだけ思い当たることが」
「本当か!?」
「ええ……前にアヤトから聞いたのですがーー……」






「スーバールくんっあっそびーましょ」
「んだよ変態……」

 自室に戻り眠りにつこうとしたときライトが部屋を訪れた。

「んふ、眠れなくってね。だから眠くなるまでスバルくんと遊ぼうと思って」
「他あたれ」
「もぉ冷たいなー愛しい愛しいお兄ちゃんが遊ぼうって言ってるんだよ?」
「何が愛しいだよ気色わりぃ。さっさと帰れ」
「スバルくんは酷いなぁボクはこぉんなにもスバルくんのこと愛してるってのに」
「はっ愛?愛したことも愛されたこともねぇくせによく言えるよな」

 レイジに言われたこと……それはライトが母親に愛されていなかったという事実を突き付けることだった。あれほど母親を崇拝している彼ならそのことを言えば恐らく何かしら反応は示すでしょう、と。

「母親からも愛されてなかったやつが愛なんて語ってんじゃねぇよ」
「スバルくん、」

 空気が変わる。まずいと思ったときには既に遅く、強引に床に押し倒され手首を頭上で一つに纏められる。振りほどこうと試みるものの手首が折れるのでは無いかと思うくらい強く抑えられそれは出来なかった。顔を上げライトの顔を見ると笑みの消え失せたいつもからは想像も出来ないほど冷たい瞳がオレを見下ろしていた。
「いくらスバルくんでも言っていいことと悪いことがあるんだよ?それくらい分かってるでしょ?」
「は、なせっオレは事実を言ったまでだろ」
「事実……?ボクが愛されてなかったって……?」

 ライトがくくくと笑いオレの喉元へと手を伸ばす。

「そんなわけ無いでしょ?本当に怒るよ、スバルくん?」
「はってめえが怒ったところでなんだって言うんだよ」
「スバルくんったらそうやってすぐに人を煽るんだからぁ」

 口調はいつも通りだが声色は冷たく、明らかに様子がおかしい。ああ確かにこれは効果アリだな、と思いつつ何とか抜け出そうと足掻く。しかし拘束が解けることは無かった。

「そういう子にはお仕置きが必要だよね?」

 そう言うとライトは首に添えていた手に力を込める。本気で殺す気なのでは無いかと思うくらい強く、強く

「ぁ……ぐ……っ」
「んふ、苦しいの、ねえスバルくん?」
「は……な……せ……っ」
「んふ、よく聞こえないなぁ。あぁ、もしかして気持ちいいの?そういえば首を絞められることで快感を得る人もいるんだってね?スバルくんはそういう子だったのかなぁ?」


んふ、いけない子だねと笑いながらライトはその手に更に力を込めた。

「そういえば首を締められることに快感を見出すあまり死んでしまった俳優がいるんだけど、そんなに気持ちいいものなんだろうね。首吊りで死ぬ瞬間が一番気持ちいいなんてことを言う人もいるし世の中にはまだまだ理解しがたい性癖の持ち主がいるものだね。ねえスバルくん?」
「……ぁ……ぅ」

 お前にだけは言われたくないだろうなと反論したくとも声が出ない、それどころかくらくらしてまともに考えることすら出来ない。このまま本当に殺されてしまうのではないかとそう思ったときライトの手が離れていった。

「このままじゃ答えられないか。仕方ないから離してあげるよ、ボクは優しいからね」

 ライトの手が離れていった瞬間に一気に塞き止められていた空気が、血が巡り、朦朧としていた意識が次第にはっきりとしていく。
 しかし手首はいまだライトの右手によって押さえられており、逃げ出すことは不可能だった。

「で、どうだった?気持ちよかった?んふ、クセになったならいつだってしてあげるよ?」
「んなわけあるかクソ変態がっ」
「もー素直じゃないんだからぁ」
「勝手に良いように解釈してんじゃねぇよ。どんだけおめでたい脳ミソしてんだよてめえは」
「そんな潤んだ目でそんなこと言っても説得力ないけどなー。むしろもっと泣かせたくなっちゃうなぁ」

 そう言ってまたライトがオレの首に手をかける。ギリギリと音がしそうなほど強く絞められれば苦しさと共に何かが内側から飛び出していきそうな気持ち悪さが襲ってくる。酸素を求めて口を開いても金魚のように口をパクパクさせるだけで何も得られない。次第に遠くなる意識にこのまま身を任せれば少しは楽になるのではないかと目を閉じる。

「あーダメダメまだ眠っちゃダメ!お楽しみはこれからなんだからさ?」

 ブラックアウトする寸前でライトの手が離れていき、そのまま意識が引き戻される。咳き込みながらもなんとか呼吸を整えようとしたところでライトの手がオレの体に触れる。何かを探すように弄り、そしてお目当ての物を見つけたのかあったあったと声を弾ませていた。
 オレがいつも持ち歩いていてこいつが興味を示すものなんて見なくたって分かる。と、同時に身の危険を感じる。

「じゃあ今度はこの銀のナイフで遊ぼうか。んふ、これで切られたらきっと凄く痛いんだろうね……はぁ想像するだけでぞくぞくするよ」
「や……め……っ……」
「やめるわけないでしょ?これはお仕置きなんだから。さーてとどこがいいかなー?ここはやっぱり首筋かな?」

 首筋に冷たいものが触れる。今日のこいつは本気だ、恐らくこのままでは本当に切られるだろう。ただのナイフで切られるのならまだしもその手にあるのはよりにもよってオレの銀のナイフ……最悪だ。
 やっと意識がはっきりしだし、体に力も入る、なんとか逃げられないかと藻掻いたのだがそれは逆効果だった。皮膚を割って冷たいものが入ってくる感覚、少し遅れてやってくる焼けるような鋭い痛み。恐らくそんなに深い傷ではないが、それでも銀製のナイフによって出来た傷はやけに痛んだ。

「あーもうそうやって暴れるから切れちゃったじゃないかー。それともなぁに、もしかしてそんなに痛くして欲しかったの、スバルくんは?」
「んなわけ……あるかよ……っ」
「んふ、血が滲んで来てるよ……勿体無いなぁ」

 ライトに傷を舌でなぞるように舐められその気持ち悪さに全身が粟立つ。舐められる度に傷がじんと痛んだ。

「んふ、スバルくんの血おいしい。もっともっと頂戴?」

 ライトがナイフを持ち直しさっきの傷とは別の場所にナイフをあて、そのままその手を引く。さっきよりも深く傷ついたのかその痛みに呻き声が漏れた。ライトはそれを聞いてにやりと笑いまた傷口へ舌を這わせる。

「……っ……ぁ……」
「どうしたの……んふ、声が漏れてるけど……そんなに気持ちいいのかな?……痛いのに感じちゃうなんてスバルくんって……Mだったのかな……んふ」
「ちが……っ……!!」
「そのわりには蕩けたような表情してるけど?」
「して……ねえよ……っ」

 今更になって好奇心で怒らせたことを心底後悔した。こんなことを望んでいたわけではない。いつもやられてばかりだから少しくらい仕返しをしてやろうとそれだけのことだったのだ。それなのになぜオレはこんな扱いを受けているのか。

「何物思いに浸ってるの?まだ終わってないんだけど……っ」
「い゙っ……!!」

 ずぶりと首に突き刺さるライトの牙、そこから広がる甘い痛み。血を吸われているのとナイフによって出来た傷から血が流れ出していることで急速に体から血が失われているのかやけにくらくらしてまともに考えられなくなっていく。

「は……ん……スバルくんの血、美味しい……っ……んふ、スバルくんも……気持ちいいんだね……」
「……ぁ……ん……く、そ……」

 痛みと快楽に声が抑えられずに漏れていく。されるがままになっている自分に心底腹が立つが、もうすでに抵抗する力も、この状況をなんとかしようと考える力も全て失われていた。こうなってしまえば何度も何度も繰り返されるその行為をただ受け入れて、早く終わることを祈ることしか出来ない。

「これで分かったでしょ?ボクは君を愛してる、それにボクは愛されてた。だからもう冗談でもあんなバカなことは言わないことだよ、スバルくん?」
「ど、の口……がっ」
「まだ分からないの?」

 低い声で笑みの消え失せた顔でそう言ってライトが傷口を抉るように爪を突き立てる。

「あ゙ぐっ!!」
「それともスバルくんはこうして痛くされたいのかな?ボクはやりすぎてスバルくんが死ぬなんてことは避けたいんだけどなー」

 ぐりぐりと傷口を抉りながらそんなことを言ったって全く説得力が無い。傷口を広げられたことでまた血が流れ出しているようで首筋を生暖かいものが伝う。それと同時にただでさえ既にまともに働かなくなっていた思考が完全に停止して黒く塗りつぶされていく。

「そんな風に声抑えないでよ。ボクはもっとスバルくんの声が聞きたいんだけどな。ってスバルくーんおーい聞こえてるー?」

 答えるも億劫で黙っていたら頬を叩かれてなんどもおーいと名前を呼ばれる。

「る、せ……」
「んふ、もうそろそろ限界なのかな?」

 ライトの顔が近づいてきてその唇がオレのそれと重なる。舌の侵入を拒むようにきつく口を閉じたつもりだったのだがライトの舌がそれを抉じ開けるようにして侵入してくる。

「んふ……おやすみ、の……キス……だね」

 強引に舌を絡めとられそしてライトの牙がオレの舌を貫く。そしてまたそこから溢れる血を舐めとるように舌を絡められる。

「んふ、愛してるよスバルくん」

 そう囁くライトの声を聞きながらオレの意識は痛みと不快感と快楽と共に引きずり込まれるように暗闇へと落ちていった。




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