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 ひらり、真っ暗な空間で光る蝶が私を誘うように飛んでいた。幻想的なその風景にああ、これは夢なんだと思いながらその蝶の後を追う。
 どこまで進んでも暗闇で、蝶を見失えばこの空間に独り取り残されてしまうのかと思うとほんの少し怖くなった。その気持ちを知ってか知らずか蝶は私との距離がある程度離れるとその場で止まり私を待ってくれている。

「ねえ、どこに連れていってくれるの?」

 蝶に問い掛けても何も答えない。そうして歩いていくといつの間にか白い空間にたどり着く。そしてその先には一人の男の人が立っており、光る蝶はその人の肩に止まり、消えていった。
 嗚呼、そういうことだったんだ。私は駆け出した。その人が誰なのかすぐに分かったから。同時に私を導いてくれたあの蝶の正体も。

「久しぶりだな」

 優しく微笑みながら彼がそう言った。その笑みに、声に涙が溢れた。きっともう夢の中でも貴方に会えることはないと思っていたから……。

「レムさん……!」

 恐る恐るその身体に触れる。指先から伝わる温もり、感触、確かにレムがそこにいた。

「会いに行けなくてすまない。今もウリエに無理を言って互いの夢を繋いでいるのでそう長くは持たないだろうが……」
「ううん、いいんです、レムさんに会えただけで十分ですから」

 抱き合いお互い確かにそこにいることを確かめ合う。夢だけどこれは夢じゃない……

「いざこうして会うと何を言うべきなのか迷ってしまうな……」

 レムが考え込みそして

「リツカ、今も君を愛している」

 と真っ直ぐに私を見てそう告げた。
 
「私も、レムさんのことを愛してます、ずっと、ずっと」
 
 レムの唇が私のそれと重なる。幸せすぎてこの夢から二度と目覚めたくない……それはきっと叶わない夢だけれど。

「……名残惜しいがもうそろそろ時間のようだ……きっとまた君に会いに来る、約束しよう」
「約束ですよ」

 レムの手を握り額を合わせ目を閉じる。きっと、また会える。そう信じている限り。
 目開くともうそこにレムはいなかった。そして強い力に引き寄せられ私はベッドの上で目を覚ました。まだこの温もりが残っている手をぎゅっと握り祈る。願わくばいつの日か夢ではなく現実で貴方に触れられますように――……



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