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 飾り付けられた部屋にテーブルに並ぶご馳走と満足げに笑うリツカの姿、これは一体どういうことだ?と唖然としていると、リツカが椅子を引く。

「レムさん、もしかして今日が何の日かわかってなかったんですか?」
「今日……?」
「11月17日ですよ?」
「ああ……そういうことか」

 そういえば今日は自分の誕生日だった。だが別にただそれだけのことだ。産まれた日であるだけ、それ以外はなんの変哲もないいつも通りの日。
 
「レムさんが魔界にいた頃はどんな祝われ方してたのか分からないですし、多分味がわからないと思うんですけど、人間流にお祝いしたいと思って!兄さんにレシピを聞いて作ったのもあるから味は保証します!勿論椎茸は入れてないし!しつこくこれには椎茸を入れれば美味しくなるって言われたりもしたけど……」

 困ったように笑いながら、リツカがさあ座って座ってと椅子のところまで私の手を引き座るように促す。
 魔界にいた頃は誕生日などどうでもいいと思っていた。幼い頃はウリエと楽しく過ごしていたような気もするが、ここ最近のものはパーティーと称したつまらない貴族の交流会のようなものだった。だからこそ自分の誕生日を忘れていたわけだが。

「……今日は今までの誕生日で一番幸せかもしれない」
「レムさんにそう言って貰えて嬉しいです。もう朝からレムさんに喜んでもらえるように頑張ったんですなら!兄さんは隙あらば椎茸入れようとしてくるし……」
「そうだな、あいつが執念でこの料理に菌類を入れようとしたことはあのスープに浮いている茶色い物体を見ていれば分かる」
「ああー!もう知らないうちに……!兄さんの馬鹿!」
「本当に凄まじい執念だ、尊敬に値するぞ」
「兄さんにはきつく言っておきますから!それ以外は多分、多分大丈夫なはずだから食べてください」

 そういわれ肉料理を口に運ぶ
 
「ヒトの料理を美味しいと感じることはあまり無かったが、リツカが作ってくれたからだろう、これはとても美味だ」
「レムさんの口にあって良かったです」
「君がここまでしてくれるとは、本当にありがとう」
「どういたしまして!改めて誕生日おめでとう、レムさん!」
 
 心に生まれる温かさの中、愛しい人に祝われる誕生日はここまで幸せなものだったのかと、その幸せに浸る。次の君の誕生日にはどんなお返しをしようかとそんなことを考えながら。



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