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いっそこんな感情、記憶ごと消えてしまえばいいのにと思う。こんなにも愛しているのに、大好きなのに、今だって初めて話したときの風の匂いだって覚えているのに……
「殺す殺す殺す!私は絶対貴女を許さない!」
目の前の銀髪の少女は殺意に満ちた目で私を睨み付け本を開く。ああまたそうやって私のことを忘れていくんだね、と思いながらも私を本を開く。
救いの記憶がないのならせめてスタナちゃんの記憶全て消え去ってしまえばいいのに。私にとって大切な記憶は消えていくのに私を苦しめる記憶だけは消えない。どこまでもこの本は使うものを苦しめる。
「こんなに愛してるのに……スタナちゃんは全部忘れちゃったんだね」
「愛してる?何をふざけたことを言っているんですか?どこまでも私を馬鹿にしてそんなに殺されたいのですか?」
「スタナちゃんの馬鹿。そんなに大切な記憶だったのならどうして真っ先に書き変わってしまったことに気づかなかったのよ!」
わかっている、大切だったから真っ先に書き変わってしまったし、忘れてしまったものは気づけない。それでもいつまでも一緒にいられると思ったのに。
「こんな世界大嫌いだ」
世界はいつだって私の敵だ。それならこの世界ごと消えてしまえばいいのに。嗚呼分かってる、分かってるんだ、願えば願うほどそれは叶わない。消えてほしいものほど消えてはくれないんだ。
どこからどこまでが本当で、どこからどこまでが嘘かもうわからない、もしかしたらこんなに私を苦しめるスタナちゃんへの愛情だって嘘なのかも知れない。本当の記憶と捏造された記憶の狭間で今日も私は愛しい人に屍を向ける。
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