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その目が私を見ていないことなんてずっと前から知っていた。それでも私を愛してくれてるんじゃないかなんてくだらない夢を見ていた。
でも
「ビッチちゃん、ずっと隠してたんだね……?ボクがあの人をどう思ってるか知ってたくせに」
「だってそれは」
「言い訳なんて聞きたくないよ。ボクが愛してるのは生涯あの人だけなのにさ。んふ、それとも何?ビッチちゃんは自分が愛されてるとでも思ってたの」
ライトくんはそう言って笑っていたが目は笑っていなかった。それどころか冷たい目で私を見ていた……憎しみや怒りそんな感情が籠った目で。
「あの人がビッチちゃんの中にいると分かった以上こうしちゃいられないね。レイジにでも頼んであの人が表に出てこられるようにしなくちゃ」
「そんな……」
「んふ、これまでありがとうねビッチちゃん」
ライトくんが私の頬に触れそのまま唇の形をなぞり離れていく。私は立ち尽くすしか出来なかった。だって今までずっと二人で、一緒に、愛し合って、そう、愛し合っていたのに。
そんな態度に騙されて、ただの代用品にされて、挙げ句私は消えて体はコーデリアのものになる……?冗談じゃない。このまま利用されたままなんていやだ。
「ライトくん……?」
「なぁに?まだ言いたいことがあるわけ?ボクはれからやることいっぱいあるんだ、け……ど?」
めんどくさそうに振り向いたライトくんはソレに気づいたようで目を見開いた。私の手に握られた血に濡れたナイフ……それもただのナイフではなく銀で出来たもの。そしてそのナイフについている血が自分のものだと気づいたのだろう何かを言いたげに口を開きそして私の首に手を伸ばす。それをかわしもう一度ソレを突き刺す。今度は心臓目掛けて。
流石のライトくんもそれには耐えられなかったのかそのままフラフラと数歩歩き、そして壁に背中を預けて座り込んだ。
「銀の、ナイフ……んふ、ビッチちゃんもやるね」
「分かってたから。ライトくんが私を愛してないこともいつかこうなることも。それが訪れないことをずっと願っていたけど」
「それを分かっていてずっと一緒にいるなんてビッチちゃんもまた異常だよね」
「そういう意味ではお似合いだったのかもね」
ライトくんの前にしゃがみ抱き寄せる。そして白い首筋に牙を突き立てる。今まで何度もして、されて繰り返してきた行為。それもこれで最後。
「はぁ……んっ……快楽を感じながらイけるなんて最高だよユイちゃん」
今更名前を呼んだって、今更そんな風にされたってもう、何も変わらないのに。
ライトくんの血が私に流れ込んでくる。甘くて蕩けるような、大好きな味。これも最後なのかと考えると少し勿体ないような気もする。
「んふ……この言葉をどう思うかは……分からないけど……ボクはユイちゃんを……愛してたのかもね」
「私も愛してたよライトくん」
ライトくんから離れナイフを持ち直し私に向ける。
「だからね、ライトくん。私も一緒に行くから」
自分の心臓に向けてナイフを突き刺す。普通のナイフで刺したときとは違う焼けるような痛みが突き抜ける。
「ユイ……ちゃん……」
ライトくんがその目を閉じる。それを確認して私は微笑む。殺すことは最大級の愛の告白……そう言ったのはライトくんだった。だからこれは私からの愛の告白。
「でもどうせこうなるならライトくんに殺してほしかったな……」
ライトくんを抱き締め目を閉じる。もう痛みもあまり感じないし音も遠くなっていく。私は本当に死ぬんだ、このまま暗闇に落ちていくように。
「ライトくん、愛しーー……」
その言葉は最後まで発することなく消えていった。
最大級の愛の告白を
(貴方が教えてくれたように)
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