DL NL/ALL | ナノ



「私ね、このままじゃいけないと思うの!このままじゃ絶対に色んな人に怒られると思うの!!」
「はあ?いきなり何言ってんだチチナシ」
「アヤトくんは黙ってて」

 珍しくみんなが集まったリビング、"アレ"を提案するのは今しか無いと立ち上がったが、みんなからの視線が痛い。

「どうしたのですかいきなり、怒られる……とは?」
「そこは詳しくは言えないけど……でも普通に犯すとかビッチとかそんな言葉が飛び交ってるようじゃ絶対ダメよ!」
「今更だねー×××ちゃん。今までだって散々×××ちゃんって呼ばれてきたじゃないか。それともなぁに?もしかしてそうやって言えばボクらが×××ちゃんに手を出さないとでも思ってるの?それは出来ないよー×××ちゃんがなんと言おうとボクは×××ちゃんを×して××せてもうボク無しじゃいられないように……ってか何、さっきからピーピーうるさいんだけど」
「よくぞ聞いてくれました!実はね私的にまずいかなー?って思った単語を発すると自動的に規制してくれるの。案の定ライトくんは口を開く度に規制音だらけだけど……」
「で、それがどうしたわけ?それだけならオレは部屋に帰るけど」

 気怠そうに欠伸をして立ち上がったシュウさんの袖を掴み止める。まだ肝心なところを話していないのに戻られては困る。

「待って待って、それだけじゃないの」
「まだ何かあるんですか……まあボクはそこの規制音連発する誰かさんみたいにそういう言葉はあまり発さないので関係ありませんが」
「うん、まあ……多分一番危ないのはライトくんだしね」
「酷いなぁ×××ちゃん…ボクのことそうやってさ。んふ、こういう扱いも嫌いじゃないけど」
「テメェは黙ってろこの万年××期!」
「だぁっもううっせぇな、黙って話聞けねぇのかよ」
「あーそうやってスバルくん×××ちゃんにイイトコ見せようとしてーずるいよー」

 私をそっちのけで騒ぐ兄弟たちに苛立ちが募る。こうなれば多分私がどうこう言ったところで止まらないし、下手に口を出せばそれなら吸血させろヤらせろの獣ばかり……頭が痛くなる。

「……ライト、どうしたんですか……?」
「ん、何が?」
「ライトの足に……モザイクが」
「カナトくん、何おかしなこと言ってるの?モザイクなんて……あれ?」
「ほらーもう私の話聞かないからー」
「ちょっと×××ちゃんこれってどういうこと?」
「規制音が鳴る、までは説明したのよね?で、あまりにも規制音連発する人は危険人物に指定されて全身モザイクになっちゃうの」
「くくく……良かったな、オマエほどモザイクが似合うやつはいないぜ?」
「……勝手にやってろ、オレは戻る。どうせそれでまずいのはライト一人だろうからな」

 シュウさんはまた欠伸をして立ち上がり、ふらふらと自室へと戻って行った。確かにこれで規制されるのはライトくんだけな気がしてきた。

「ちょっとこれどうすればいいのさっ」
「黙れば良いだけだろ。何なら息の根も一緒に止めてやろうか?」
「スバルくんこわーい」

 出来ればそうして欲しいところだけど、そういうわけにもいかない。

「NGワードを喋らなければそれ以上は進行しないから安心して?それと私も一応規制対象になるから今日は普通に言ってるけど明日からはみんなと一緒でそういう言葉を発する度に規制されるからね」
「……じゃあもしフルモザイクになったらどうなるんですか?」
「私がいいって思うまでそのままかな?」
「×××ちゃんも酷いことするよねー」
「つーかお前はまず××××の呼び方から変えろ。いちいちうるせぇんだよ」
「そういうアヤトくんだって規制されてるじゃないか」
「はぁ?何でだよ××××はセーフだろ?」
「私が、って言ったでしょ?気にしてるんだから、これでも」

 これを期に私の扱いも良くしてもらおうなんて少しだけ考えていたりもする。だってみんな絶対私を人間だとは思ってないもの。基本的人権は守って貰わなくちゃ。

「いい?以後ビッチちゃんもチチナシも禁止。ライトくんは変えないと本当にフルモザイクになっちゃうよ?」

 現にもうモザイクは腰あたりに到達していた。このままいけばフルモザイクになるのは時間の問題だろう。

「いいザマだな変態」
「付き合いきれません、行こうテディ?」
「オレももう寝るわ、じゃあなモザイク野郎」
「あ、ちょっとみんな酷い!ねえ×××ちゃんは行かないよね?」
「お休み、ライトくん」
「あ、ちょ、みんなひどいよっ!!……まあこれはこれでイイけど……」

 頬を赤く染め少し危ない表情をしているライトくんを放置し、私達はそれぞれの部屋へと戻った。

「うーん…いい案だと思ったんだけど、これじゃあライトくんにしか効果が無さそうね……何か他の手を考えなくちゃ……」

 そんなことを考えながら私は眠りについた……。





「おはようございまーす……」

 次の日の夜、寝坊してしまい慌ててホールに降りるとそこにはレイジさんとアヤトくん、それからカナトくんの姿があった。

「おせぇぞ××××」
「寝坊ですか?全く……あなたという人は……」
「ごめんなさい……あれ、ライトくんは?」

 シュウさんとスバルくんが降りてこないのはいつものことだけど、ライトくんが降りてこないのは珍しい。

「知りません。どうせ寝坊でしょう」
「呼んできましょうか?」
「いえ、来なければ置いていくまでです」

 そのとき後ろから階段を降りてくる音が聞こえ、振り返るとそこには

「×××××××」

モザイクが立っていた

 モザイクが、と言うよりフルモザイクになってしまった×××くんがそこにいた(しかも名前そのものまでNGワードになっている)……多分NGワードを連呼しすぎて存在そのものが規制対象になってしまったんだろう。その前までは名前は呼べたから多分また×××ちゃんとか言って規制レベル上げちゃったんだろうな……。

「××××××××!!」
「あぁ?なんだよピーピーうるせぇなぁ」
「邪魔ですね…燃やしてしまいましょうか?」
「×××××!××××!!」
「日本語で言ってください。何を言っているのか分かりません」
「××××××!!」

 私の方を向いて助けて欲しそうなオーラを出しているけどそっぽを向いて知らんぷりをする。だってこうなったのは×××くんが悪いわけだし。

「間に合ったか……?」
「あ、スバルくんおはよう」
「って……んだよこのゴミ、邪魔だな」

 スバルくんが思いっきり×××くんを蹴飛ばす。ああ……痛そう。

「おいスバル、それ捨ててもいいぜ?ピーピーうるせぇからな」
「×××××!!」

 多分スバルくんに助けを求めてるんだろうけど、全て規制音に変換されてやかましいだけだ。

「オレが捨てるよりカナトが燃やした方が早いだろ、ほらよっ」

 スバルくんが×××くんを押してカナトくんの方へと追いやる。

「面倒ですね……」
「×××××!×××××!?」
「ピーピーうるせぇな鳥かよっ」
「鳥にしてももっと綺麗な声で鳴いてください、耳障りです」

 少し可哀想かな?と思い始めたところで×××くんが走り出しどこかへ行ってしまった。

「あっおい×××が逃げたぞっ!ちゃんと捕まえておけよなっ」
「はぁ?テメェが自分で捕まえておけばよかっただろダメ兄貴」
「な……っ!!」
「いつまで遊んでいるんですかっ学校に遅刻しますよっ車に乗りなさいっ」

 怒り出したレイジさんを横目にアヤトくんとスバルくんは×××くんを追いかけて行ってしまった。

「あ、ちょっと……!!」
「全くどうしようもない弟達ですね……それにあなたもあなただっ!!」
「えっ」
「変なことを企むからこうなるのです。この詫びはきっちりしてもらいますからね……?」
「……ごめんなさい」

 ここの兄弟は規制するだけ無駄なのかもしれない……結局そのツケは私に回ってくるのだから。

「もう知らないっ!!」





規制対象
(いっそ私を規制しようか……)



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