繋いだ手から伝わる温度にやっぱりこいつは人間なんだと改めて思う。オレ達にはないそれがオレの手に伝わって、混ざりあって溶ける。
「スバルくんの手は冷たいね」
頭のなかを読まれた気がして一瞬ギクリとしたが、ユイはただ白い息を吐き出しながら繋いだ手を見ていた。
「当たり前だろ、オレはヴァンパイアだ。体温なんてあるわけないだろ」
「そうだね」
ユイがオレの手を強く握った。ユイの体温をさっきよりもより感じて自分の手にも熱が通っているような錯覚を覚えた。
「手が冷たい人は優しいって言うよね」
「はぁ?何言って」
「スバルくんは優しいよ?」
「なら強引にその首筋に牙を突き立てて血を奪ってもいいんだぜ?」
「スバルくんにならいいよ。それでもスバルくんは優しいから」
顔が赤くなりそうな気がして微笑むユイから顔を背けると、ユイがオレの顔を覗きこもうとする。小さく舌打ちをして歩む速度を上げる。
「まってよスバルくん、早いって!」
「うるせぇ!」
「照れてる?」
「んなわけあるか!」
突然立ち止まると、ユイが止まりきれずよろける。それを抱き止め唇を重ねた。ユイは突然のことに頭がついてこなかったのか呆然としたあと顔を真っ赤にしていた。
「照れてんのはどっちだよ」
「そういうスバルくんも顔赤いよ?」
「赤くねぇよ!」
そんな繋いだ手の温度のように生ぬるい、昔なら下らないと吐き捨てるような幸せにもう少しだけ浸っていたいと、そう思ったのだった。
冬の温度
(それは混ざりあった二つの手の)
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