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日に日に大きくなる私の中の声。それは私を蝕み、私の体さえ奪おうとする。
「コーデリア……」
それは私が愛するライトくんのお母さんの名前、そして私の心臓の本当の持ち主の名前……。
「どうしたのビッチちゃん、何か言った?」
「ううん、なんでも無いよ」
横に立つライトくんの手を握ると少しだけ安心した。
こうやって一緒に居るようになってからどれくらい経ったんだろう……。もう自分が何年生きたかなんて忘れてしまった。バンパイアは人間と違って悠久の時を生きる。だから何年生きてきたかなんてどうでもいい話だった。
「私ね、ライトくんに出会えて良かった」
「ボクもだよ、ビッチちゃん。でもいきなりどうしたの?」
「ねえ、ライトくんはあの日の約束覚えてる……?」
「約束……?」
「私が私であるうちに殺して……って」
「そういえばそんなこと言ってたね」
「それならライトくん、私を殺して?」
ライトくんは一瞬驚いたような顔をしてそれから笑った。
「んふ、確かに殺すことは吸血鬼にとって最上級の愛の告白って言ったけどそんなことして証明しなくてもボクはビッチちゃんを愛してる。これは事実だよ?」
「分かってる、私はライトくんを愛しているし、ライトくんも私を愛してくれている。でもこれはもうどうしようもないことなの」
もしコーデリアが表に出てきてしまえばきっとライトくんはコーデリアを愛する。そんなの私は耐えられない。ライトくんの愛情は私だけのものにしたいの。
本当は今も私を愛してなんかいないのかもしれないけれど……。
「だからライトくん、私を殺して?」
「ビッチちゃんがそれでいいならいいけど……やっても良いなら本当に殺すよ?だってボクはビッチちゃんを愛してるんだから」
「いいよ。私もライトくんを愛してるから」
「んふ、最高だね」
「ねえ、愛してるなら最期にキスしてライトくん」
「いいよ」
ライトくんが私を抱き締めそしてライトくんの唇を私のそれに重ねる。酸欠になりそうなほど深く口付ける。これが最期のキスなんだと思うと不意に涙が零れた。
分かっていた、いつかこうなることを……それでも傍に居たいと願った。例えライトくんのくれる愛が偽りで、本当に愛している相手が私じゃないとしてもそれで良いのだと。
「ん……ユイちゃん……それじゃ……ぅ……」
胸に鋭い痛みが走り、焼け付くような痛みに眉をしかめる。
「ライト……く……んっ!!」
離れようとしたが頭を押さえられてしまいそれは叶わなかった。
「……ん……最後まで……ボクを感じてよ……」
「んっ……ぁ……」
快楽と痛みの中に落ちていくような感覚、次第に意識は朦朧とし、視界はブラックアウトしていく。
きっとこのまま私は死んでいく。そうすればライトくんは私の心臓の秘密には気づかない、だから最後まで私にその愛を向けてくれる。歪んだ愛を、偽りの愛を。
「じゃあね、ボクの愛しいユイちゃん」
嬉しそうに笑うライトくんに私も笑顔で応え、そして私の意識は暗闇の中へと沈んだ。
私だけを
(あなたの愛は私だけのもの)
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