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私は知っている、貴方が嘘をついていることを。私はそれを知っていながら知らないふりをして貴方と共にいる。
「んふ、どうしたのビッチちゃん、そんなうかない顔してさ」
「ううん、なんでもないよ?」
貴方にとって私は沢山居るなかの一人。ただの使い捨ての玩具。本命が誰なのかも知っている。そしてその人に私は……いいや私以外の玩具にされてる人だって敵いはしない。
だからこそ知らないふりをして形だけでも愛されていた方がましなのだ。そんなこと指摘したところでどうにもならない。そう思っていながらも口からは本音が零れた。
「私なんてライトくんにとっては沢山いる都合の良い女の一人なんだろうね……」
そう言うとライトくんは一瞬驚いたような顔をしてから堪えきれず吹き出しけらけらと笑いだした。
「まさかビッチちゃん自分は本当は愛されてるんじゃないかとか思ってたの?んふ、そんなの有り得ないよ」
「別にそんなわけじゃないけど……」
「ほぉんと人間って愛だの恋だのつまらないものに執着するよね。気持ちよければそれでいいのにさ」
ひとしきり笑ったあとライトくんの顔から笑みが消える。
「もう君には飽きたよ。もうこれも今日でおしまい。まあ退屈しのぎにはなったかな?じゃあね、ビッチちゃん」
「な、待って……!」
「自分で言ったでしょ?沢山居るなかの一人だって。だから別に君じゃなくていいんだよ」
冷たく言われたその言葉に返す言葉が見つからなかった。そう、私は分かっていて側にいた、いずれ捨てられることだって理解していた……はずだった。それなのにこんなにも苦しくて……。
「どうして、」
どうしてあの子なのと言いかけた口を閉ざし、俯いて拳をぎゅっと握り耐える。ああそうだこの人はこういう人なんだ。
「さよならライトくん」
震える声でそう言って私はライトくんの前から逃げ出すように走り出した。涙でぼやける視界、苦しくて押し潰されそうな胸。こんなに酷いことをされたって、突き放されたって、まだ心のどこかで彼に愛されたいと思ってしまうなんて
「いつのまに私までこんなに歪んでしまったのかしら」
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