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人と吸血鬼の時の流れは違う。それは十分に分かっていたはずだ。それでもオレはどこかでいつまでもこの時が続くんじゃないかとそんなありもしないことを信じていたのかもしれない。
「スバルくん、私はね……スバルくんのことずっと愛してたよ……ずっと一緒にいたかったな……」
「……っ」
「そんな顔しないで……死はバンパイアにとって祝祭の始まりだって……誰かが言ってたでしょ?」
「それはオレたちにとっての話で」
「だからねえ笑って……私スバルくんの笑顔が見たいな」
ユイの震える手がオレの頬に触れ、そしてくしゃりと笑う。なんで笑うんだよ……こんなときに……。
「スバルくんはきっとこれからも長い長い時を生きる……私はまた生まれ変わってスバルくんに会いに来るよ……だからね、スバルくんも私を探して……?」
オレの頬に触れているその手にオレの手を重ねて頷く。
「当たり前だ。お前はオレのもんだ。逃がさねぇよ」
「ふふ、約束だよ、スバルくん……大好きだよ……」
「ユイ……!」
桃色の瞳から光が失われていく。それと同時にオレの中で何かが音をたてて崩壊していく……大切なものが壊れていくのをオレはただただ呆然と見ていることしか出来ない。抗えないことだとわかっていても悔しくて、悲しくて。
「……っ愛してる」
絞り出すようにそう言うとユイが少しだけ笑ってそして瞼をゆっくりと閉じそれから開くことは二度となかった。本当に崩れ落ちてこの手をすり抜けていってしまった。もう二度とあの日々には戻れない……。オレに出来るのは生まれ変わって来ることを待ち望みそのときが来たら迎えに行くことだけ。
「生まれ変わって……か」
きっとこいつが生まれ変わってまたこの世に産まれてくるときもオレはこの姿のままだろう……それならいくらこいつでもオレのとにき気づくんじゃないかと思いそこでふっと笑う。
「さっきまでは時の流れを嘆いてたくせに今度はそれで良かったなんて言うのかよ」
体温を失い冷たくなっていくユイの額に口づける。絶対にまたお前に会いに行く。そのときまでは
「おやすみ、いい夢を」
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