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 手をすり抜け、まるで鳥籠から逃げ出した金糸雀のようにボクの元から離れていく。そうして気づいたときにはもうそこにいなかった。

「ユイさん……?」

 誰もいない屋敷の中探し回ってもその姿はどこにも無い。まるで最初からいなかったかのように何も残さず消えてしまった。

「どうして……ユイさんは……ボクのものじゃ無かったんですか……っ!?」

 叫ぶその声は城に反響してそして消えていく。泣いても怒ってもそこには自分一人。こんなのおかしい……これは……、

「夢?」

 そこでボクは目を覚ました。変な夢だ……ユイさんはボクから離れていくわけないのに。
 隣で眠るユイさんの頬に触れる。冷たい、体温を持たないその体……。

「ユイさんはずっとここにいるじゃないですか……ふふ、愛してますよ」

 その人形を抱き締めボクはもう一度眠りについた。



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