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「ユイはボクだけを見ていればいいのに」

ぼんやり月を眺めていたときカナトが呟く。どうしたの?と聞いてもううんなんでもないよと笑うだけ。

「カナト、どうかしたの?」
「ユイの目を抉り出してボクだけを見ていられるように出来たらいいなって思うんだ。でもそうしたらユイの色んな表情を見れなくなっちゃうからね」
「そっか、それなら、いいよ?」

そういってカナトの手をつかみ私の目のところへと持っていく。

「ずっとカナトだけをこの目に写せるなら私幸せだよ?」

そういって笑って見せるとカナトくんも微笑んで私の瞼に優しいキスをする。もうカナトが見れないのは少し残念だけど、私の目はカナトだけを向いてカナトだけを写すようになる……それはこれ以上無いほど素敵で幸せなこと。だって私の目を抉り出すということは私の側にカナトがずっといてお世話してくれないと私は何もできなくなる。死ぬまで二人一緒……そう考えただけで嬉しくて嬉しくて涙が零れる。

「ユイ、泣いてるの?」
「うん、とっても嬉しくて」
「よかった、それじゃあユイもそれを望んでるんだね」

こくりと頷くとカナトは安心したような表情を浮かべて部屋を出ていった。少しして戻ってきたその手にはスプーンが握られていた。

「ちょっと痛いかもしれないけどユイは我慢できるよね?」
「勿論、カナトがくれる痛みだもん」
「それじゃあ、いくよ」

焼けるような耐え難い痛みと共に左半分の視界が黒く染まる。カナトの服を握りしめ耐える、これはカナトがくれる痛み、私への愛。

「それじゃあ右もいくよ?」

冷たいスプーンが目の中へと入っていく、ぐりぐりとぶちぶちと繋がっているものが引きちぎられ抉り出されていく。

「大切にするからね、ユイ」

視界が完全にブラックアウトする寸前に見えたのは嬉しそうに笑うカナトの顔だった。



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