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「……っ!大人しく、なさい……!」
「それはこっちの台詞だ……これは何のつもりだ……っ!」
 
 逆巻家のリビング、そこのソファーで眠るシュウ。そんないつもの風景がこの日は少しばかり違った。
 いうものようにソファーに横になるシュウの上にレイジが跨がりその手をシュウの頭へと伸ばしている。それに対してシュウはその手を掴み必死の抵抗をし、謎の攻防戦が繰り広げられていた。

「人の髪引っ張っておいて大人しくしろってそれで黙ってる奴がどこにいるんだ……抵抗するに決まってるだろ」
「私は好意で貴方の髪を毟り取り近い将来その髪を失ったときの為に鬘を作って差し上げようとしているのです。滅多にない私の善意を素直に受け取ったらどうです?」
「どう考えても悪意しかないだろ……」

 一瞬たりとも気を抜けない攻防戦を繰り広げているとその音に三つ子たちも気づいたようで二階部分から何だ何だと顔を出す。

「珍しくシュウの態度に腹を立ててレイジも武力行使に出ちゃったって感じ?」
「どうでもいいけど静かにしてほしいです」
「オレ達が騒いだらすぐに怒るクセにうるせぇぞシチサンメガネ!」
「黙りなさい!私は今シュウを思って鬘を作って差し上げようと!」
「カツラ……?」

 三人が顔を見合わせ頭上にハテナマークを浮かべて首をかしげる。

「シュウがハゲたってこと?……ぶっちょっとシュウなに投げて……これ本じゃない!すっごい痛かったんだけど!」
「で、誰がハゲたって?」

 シュウが近くにあった本を投げ、それがライトの頭にクリーンヒットしライトが仰け反る。文句をいいながら拾い上げたその本には『羅生門』と書かれていた。

「んふ、成る程……これを読んでシュウへの嫌がらせを思い付いたわけね」
「は?どう言うことだ?」
「老婆が死体から髪を毟って鬘を作ろうとしてるシーンが出てくるんだよね、この本」
「ライトがそんな本を読むなんて珍しいですね」
「いやね、その老婆から服を剥ぎ取るシーンがあったんだけど……適当にリビングにあったの開いて捲ってたら着物を剥ぎ取ったってとこだけ見えてね」
「もうそれ以上言わなくていいです」
「まーお前がそんな本読むなんてそんなことだろうと思ったぜ」
「なーんか貶されてる気がするけどまあいいや」

 そうして二人の防戦にまた視線を戻し、少ししてからライトがいいこと思い付いちゃった……!とにやりと笑った。

「これ、どっちが勝つと思う?ボクはレイジに夕飯のデザートと特別にマカロンもつけちゃう!」
「乗った!オレ様はシュウにかけるぜ」
「面白そうですねじゃあボクは……」
「ったく……なんの騒ぎだよ……ゆっくり寝てもいられねぇ……。またカナトがヒステリーでも起こしたのか……?」

 うるせぇ、と文句をいいながらスバルも三つ子がいる二階部分へと歩いてくる。そして下を除く三つ子に気づき首をかしげた。

「お前らじゃないならこの騒ぎはなんなんだ?」
「ほら、あれ」

 ライトがシュウとレイジを指差し、それを見てスバルがそういうことかと溜息をついた。

「レイジまであんな喧嘩するようになったのかよ」
「それだけ日頃の鬱憤が溜まってるんでしょ。で、スバルくんはどっちにかける?ボクがレイジ、アヤトくんがシュウ、カナトくんは……」
「僕はレイジにかけます」
「だって。スバルくんはどうする?」
「くだらねぇ、やらねぇよんなもん。まあ、どうせシュウが勝つだろ」
「はいはーいスバルくんはシュウね!」
「そういう意味じゃねぇ!」
「お!レイジがシュウの髪を掴んだぞ」
 
 アヤトのその声にライトとスバルも二人を見と、レイジの手がシュウの前髪を掴んでいた。しかしそれを制するようにシュウがレイジの手を掴みまお互いそのまま動けず止まっていた。

「んふ、これはボクとカナトくんがデザート貰えちゃう感じかなぁ?」
「ふふ、当たり前です」
「いや、まてこれは……!」

 レイジの一瞬の隙をつきシュウがレイジを引き剥がし突き飛ばす。バランスを失い二、三歩よろよろと後退し、レイジが小さく舌打ちをした。

「シュウの勝ちだな」
「よっしゃ!オレ様にデザート献上しやがれ!」
「そ、そんな……こんな、こんなのおかしいですレイジこれはどういうことですかレイジのせいで夕飯でデザートが食べられないじゃないですか!」
「知りませんよそんなこと!勝手に賭事にして勝手に負けたのは貴方でしょう?」
「うるさい!」

 カナトが叫びながら一階へと降りてレイジに詰め寄る。

「あーあ残念。まあ面白いものがみれたしいいか。デザートは仕方ないからスバルくんにあげるよ。じゃあかいさーん」

 ライトのその声でアヤトとスバルはそれぞれの部屋へと向かって歩きだし、レイジとカナトが言い合っている間にいつのまにかリビングからシュウも消え、そのあとはただカナトがレイジに詰め寄り怒り狂う声だけが屋敷にこだましていた。












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廿楽と悪ノリで盛り上がった話から。
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