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 どこまでも続く闇の中に沈んでいく感覚……体は動かなくて、何も見えなくて、何も聞こえなくて、ただただ沈むしかない。私はどこへ向かうんだろうか?
 私の体はコーデリアさんに奪われ、そしてレイジさんは死んでしまった。救いの無いバッドエンド……結局私は何一つ出来なかった。レイジさんが必死に助けだそうとしてくれているのをただ見ているだけ。自分の無力さが嫌になる。

「レイジさん……」

 言葉は届かない。もう私という存在は消滅して、どこにもいない。私もレイジさんも……もう居ない。

「――イ…………ユイ…………」

 ふとどこかから懐かしい声が聞こえた気がした。必死に私を呼ぶような声……。こんな幻聴が聞こえるなんて、私はまだレイジさんが助けてくれるなんて幻想を抱いているらしい。

「ユイ!!」

 確かに聞こえたその声、これは本当に幻聴なのだろうか?
 必死に目を凝らし辺りを見回してみたが、いつもと変わらずどこまでも闇が続くだけだった。

「レイジさん……会いたい……です」

 涙が零れた。もうこの闇の中で独り沈んでいく感覚にも慣れたはずなのに、どうしようもないと理解しているはずなのに……。

「レイジさんっどこにいるんですかっ!?」
「こっちです!さあ、手を!!」

 暗闇の中に一筋の光が差し込む。温かいどこか懐かしいようなそんな光。私はその光に向かい手を伸ばす。しかし体は思うように動かずあと少しのところで光には届かない。

「まったく……世話のやける人だ」

 呆れたような声が聞こえたかと思うと光の中から現れた手が私の腕を掴み、私は光の中へと引き寄せられた。
 冷たい手……懐かしいこの手の感覚は間違い無く――……

「れい…じ、さん……」
「やっと目が覚めましたか」

 あの何もない暗闇に慣れていたからだろうか、目を開けていられないほど世界は眩しく輝いていた。そして久方ぶりの自分の肉体はなんだかとても重く、少し動かすのも億劫な程だった。そんな中愛おしい声がする方をなんとか向き、なんとか光の中にいるその人の姿を見ようとする。


「本当に手のかかる人ですね……」
「どう、して……?」
「私がここにいるのが不思議ですか?」
「だってれいじさん、しんだって」
「言ったでしょう、必ずアナタを助けると。時間はかかってしまいましたが……」

 やっと眩しさになれ、その人を見る。そこにある愛おしい人の姿。でも何かが違った。寸分違わずその人であるはずなのに纏う空気か何かうまく言い表せないような何かがーー……

「転生などという人間のくだらない幻想は信じていませんでしたが……かけてみるものですね」
「転、生……?」
「ええ、確かに私はあのとき死にました。しかしよほど執念深かったのかそのままの記憶をもってまた産まれてきた。そして貴女を取り戻すため今まで準備していたのですよ」
「そこまでして私のことを?」
「ええ、勿論。約束したではありませんか」

 レイジさんが私の手をとりそっと口づけ微笑む。

「私が約束を破るような性格だと思いますか?」
「いいえ、思いません」
「よろしい。では行きましょうか」

 私を軽く抱き上げ、レイジさんはどこかへと歩き出す。
 懐かしい香り、懐かしいその手の感触。これからまた新たな人生を私は愛しいレイジさんと共に送れるのだ……。

「私、とても幸せです」
「私といるのですから当たり前のことです」

 そう返すレイジさんの顔が少し笑っていたように見えたのはきっと気のせいではないだろう。
 これからは永遠に闇から救ってくれた私の光と共に……。



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