自分でも、どうしてわたしがスリザリンに入れたのか、その理由がわからなかった。

わたしの脳天気な性格をさしてか、マイペースな性格をさしてか、同じ寮生たちは、わたしのことをスリザリンのあぶれ者と呼んだ。だからと言ってもちろんスリザリン生であるわたしは他寮生からしてみたらただの狡猾なスリザリン生のひとりでしかなくて、他寮生からは後ろ指も指された。

正直な話、わたしには自分がスリザリンに振り分けられた意味がわからなかった。確かにわたしの家はそこそこだけれど、絶対に、スリザリンに入らなくてはいけないような名家でもないし、闇の魔法にも通じていたわけでもない。

本当は、わたしは他の寮に振り分けられたかった。それがわたしの、本音。だった。わたしをスリザリンに振り分けた組分け帽子の見る目のなさに、悪態をついていたのも事実だ。

だけどわたしはここに来て、ああ、わたしがスリザリンに振り分けられたのは、正しかったんだと漸くそう気が付く。

わたしは、彼のためにだったらどこまでも狡猾になれる。わたしはこんなに残酷に、なれたんだ。わたしは自分さえ知らなかった自分を知った。


「さよならダンブルドア」


わたしはあなたを心から慕っていたけれど、わたしはあなたに何の恨みもないけれど。わたしはただ冷酷にそう呟いて緑の光線を飛ばした。そんなわたしの姿に、最期のダンブルドアはひどく哀しそうに目を見開いていたけれど、わたしは自分のしたことを悔いたりはしなかった。そう…、これで、良かったのだ。


「ドラコ、ほら、もう大丈夫。わたしがダンブルドアを殺したから」


そう言ったわたしにドラコはひどく青い顔をしていた。視界の隅に見えるスネイプ先生も少し驚いたような顔をしていて、ベラトリックス・レストレンジだけが何かを堪えられないとでもいうように声高に笑っている。

ドラコはわたしの同級生で、幼なじみの男の子でわたしの好きな人。わたしは、6年になったドラコが生命の危機を抱えながら奔走していたのを知っていた。そんなドラコの手助けが、わたしは、ずっとしたくて、したくて仕方がなかった。

そしてそれが今日、それが漸くできた。


「スネイプ先生、それからミスレストレンジ」

「…何だ」

「わたしがドラコの標的を奪って殺しました。ですがわたしがダンブルドアを殺せたのは、ドラコのお陰です。だから、そう、名前を言ってはいけないあの人にお伝えください」


わたしの言葉にスネイプ先生は堅い顔をしながらわかったと答え、それから何かを自嘲するかのように小さく笑った。その一方でベラトリックス・レストレンジがわたしを気に入ったと言って歩み寄ってくる。

そんな中でドラコだけが時が止まってしまったかのような顔をしてわたしのことをじっと見つめていた。こんなわたしは知らないとでも思ったのだろうか。それはそうだ。こんなわたしはわたしさえ知らなかった。だけどわたしは、あなたのためになら。


「…ミスレストレンジ、わたしを死喰い人に推薦していただけませんか」


悪魔にだってこの魂、売り渡すこともできる。

だからわたしを好きになって、なんて言わない。だからあなたは、幸せにならなくちゃダメなんだよ。わたしはそんな気持ちの全てをこめて、ドラコに小さく微笑した。そんなわたしに歓喜の声をあげたのは、ベラトリックス・レストレンジただひとりだった。そしてわたしの世界は冷えていく。ドラコはずっと何も言わなかった。

/それは冷笑

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