コレの続き


最悪だ。あたしって奴はなんて最悪な人間だったんだ。変わってしまった風丸を見て、あたしはそれを知った。

あたしのせいだ。絞り出すような声でそう呟いたあたしに風丸はゆっくりと笑った。


「なまえのせいじゃない。なまえのお陰なんだ」


瞳から光を消してそう言った風丸の表情は、全く正気には見えなかった。風、丸。あたしの言葉に風丸はどうしたと答えるけれど、あたしにはあたしの言葉が風丸には届いていないように見えた。

風丸がキャラバンを降りて、雷門に帰ってきてから数日が過ぎた。泣きそうな顔をして帰ってきた風丸にあたしが怒鳴りつけてから数日。帰ってきたはずなのに姿が見えなくなっていた風丸に、あたしは小さな焦燥を覚えていたけれど、風丸を探そうとはしなかった。それだけあたしは風丸に腹を立てていたんだ。だけど今の風丸の顔を見てあたしははじめて気が付いた。

あたしはとても傲慢だった。自分は何もしていないくせに、風丸ばかりを責めた。あの日、風丸は戦って戦って戦って、傷だらけになって帰ってきた。守の隣りにいて、風丸が一緒に戦わなければいけなかったことを風丸は1番わかっていて帰ってきたんだ。1番風丸のことを許せなかったのは、風丸だったはずだ。それなのにあたしは、そんなことも理解できずに感情のままに風丸を責めた。

目の前で薄く笑う風丸に泣きたくなる。風丸をこんなにしたのは、風丸を壊したのは、紛れもなくあたしだ。


「なあなまえ。俺今、新しくなった雷門中のマネージャーを探してるんだ」


まるで悪さをする子供みたいにはしゃいで風丸が言う言葉があたしの心臓を刺す。新しくなった雷門中?あたしの言葉に風丸は嬉しそうに頷いた。そこに守や豪炎寺くん、鬼道くんはいるの?なんて聞くのは、きっと野暮なことなんだろう。いないにきまってる。守たちはまだキャラバンに乗って全国を飛び回ってる。


「俺はマネージャーになまえがなってくれると嬉しいな」


笑顔で差し出された風丸の手にあたしは少しぞっとした。これは風丸の手じゃない。ここにいるのは風丸じゃない。あたしの知ってる風丸はこんな人じゃない。あたしの頭の中には否定の言葉ばかりが渦巻いたけど、考えなくとも、あたしに提示された選択肢なんか最初から1つしなかったんだ。


「…わかった、いいよ」


風丸が風丸でなくなったのがあたしのせいなら、あたしがこれ以上彼を拒絶するわけにはいかなかった。握り返した風丸の手の温度は昔と変わらない。ただあたしが頷いた瞬間、風丸が少し寂しそうな顔をしたような気がしたのは、きっと、あたしのエゴだったんだろう。

/一緒に飛び降りて 心中

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