「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」
「変態が2つ入ってるよ」わたしの言葉に笑ってそう答えた男に、わたしは大袈裟にため息をついてみせた。
「これ全部アンタに言ってることなんだけど」わたしの言葉はもう聞こえないらしい。随分と彼は都合のいい耳を持っていると思った「死んじゃえばいいのに」
「ダメだよ人にそんなこと言っちゃ。学校で習わなかった?」
「…本当に都合のいい耳」
「あそっか。小中不登校で高校は中退だったね。ごめんごめん」
相変わらずわたしの言葉などは無視して、サラリと人の傷口をぐりぐりとえぐるこいつはサディストなんていう可愛らしいものではなくてただの「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」だ。
「はは、ひどい」思ってもいないことを笑って言えるのは、これは一重に才能だ。とかではなくてコイツが「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」だからだと思う。
どこぞの身体サイボーグ人間こと平和島静雄の言葉を借りるならノミ虫という表現も存外間違っていないかもしれないけれど、やっぱり少し違う。臨也はただの「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」だ。
「キミそれあと何回言うつもり」
「臨也がわたしの前から消えうせるまで」
わたしの辛辣な言葉に、常人ならば気分を害するところを臨也は楽しそうに笑った。そういうところが「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」なのだ。
臨也は人間を愛してるからでこそ全ての人間を楽しく見つめられると言うけれど。本当にそういうところは気持ち悪い以外の何ものでもない。
「でもさ、そのキミ曰くのヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイから言わせてもらうと、キミも充分に変態で鬼畜で気違いで変人で最低で最悪で変体だと思うよ」
にやりと笑って、臨也はそう言った。わたしにはそれが否定できなかった。いやしなかった。
なぜならわたしは臨也の最愛の人であり、臨也がわたしの最愛の人だからだ。「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」な彼を愛してしまったわたしもきっと、彼の言う通り「ヘンタイキチクキチガイヘンジンサイテイサイアクヘンタイ」なのだとわたしは思う。きっと狂ってる。
そしてわたしは今日も彼の唇に噛み付いた。多分これからもわたしは、死ぬまで彼のことを否定し続ける。
/異常カップル